オンラインカジノが刑法186条1項にいう「賭博」に該当するとした事例 東京高等裁判所判決 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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オンラインカジノが刑法186条1項にいう「賭博」に該当するとした事例

 

東京高等裁判所判決/平成18年(う)第2232号

平成18年11月28日

常習賭博被告事件

【判示事項】    1 いわゆるオンラインカジノが刑法186条1項にいう「賭博」に該当するとした事例

2 本件犯行の用に供しようとした現金について,原判決がゲーム店の店長である被告人以外の者に属しないとして没収を言渡したのに対し,共犯者である同店のオーナーに属する物である可能性がある以上,いわゆる第三者没収手続をとる必要があるとした事例

【判決要旨】    1 本件は,ゲーム店に設置したパソコンを使用して,インターネットを介し,いわゆるオンラインカジノを運営する会社からオンラインゲームの配信を受け,同店舗内に設置したパソコンを使用して,客にそのゲームを行わせていたものであるところ,客は,店からパソコン画面上でゲームを行うために必要なポイントを1ポイントにつき100円で取得し,パソコンを操作して画面上で行われるゲームの結果にポイントを賭け,賭けに勝った場合は1定の倍率でポイントを取得し,ゲーム終了後1ポイントにつき100円で店から払い戻しを受け,賭けに負けた場合は賭けたポイントを失うという約束の下にゲームを行ったものであるから,客はパソコン画面上で行われるゲームの結果という偶然の事情にポイントを賭け,賭けに勝った場合はポイントを取得して,これに見合う金員を店から取得し,賭けに負けた場合はポイントを失って,店がそれに見合う金員を取得するという関係が認められるのであるから,店と客とは,パソコン画面上のポイントを介して現金の得喪を争っていたことになり,これが店にとっても客にとっても賭博に当たることは明らかである。

2 原判決は,現金75万2000円は原判示犯行の用に供しようとした物で被告人以外の者に属しないとして,没収の言渡しをしているが,上記現金は,被告人が店長を務めていたゲーム店において行われた客との賭博によって客から取得した現金及び客に支払うための準備金であり,本件犯行の用に供しようとした物と認められるところ,被告人は,店長として同店における上記現金を管理していたことが認められるものの,同店のオーナーは被告人以外の者であることがうかがわれるのであるから,そのような可能性がある以上,これを没収するためには,同店のオーナーに対する関係で刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法所定の手続をとる必要があるところ,本件においては,第1審においてその手続がとられていないのであるから,上記現金を没収した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある。

【参照条文】    刑法186

          刑法19

          刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法2

【掲載誌】     高等裁判所刑事裁判速報集平成18年231頁