被告Y学院の短大総務課において,派遣労働者として3年間勤務した後に,有期嘱託職員として雇用され,従前と同様の業務に従事して当該雇用契約を2回更新した原告Xに対する雇止めにつき,本件嘱託雇用契約が実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態となっていたとはいえないが,原告が担当していた業務の恒常性および本件雇用契約更新時のX・Y学院間の合意内容,更新時のB事務局長等の説明等からすれば,Xには,本件雇用契約が締結された時点において,本件契約がなお数回にわたって継続されることに対する合理的な期待利益があるとされた例
東京地方裁判所判決/平成19年(ワ)第27403号
平成20年12月25日
地位確認等請求事件
【判示事項】 1 被告Y学院の短大総務課において,派遣労働者として3年間勤務した後に,有期嘱託職員として雇用され,従前と同様の業務に従事して当該雇用契約を2回更新した原告Xに対する雇止めにつき,本件嘱託雇用契約が実質的に期間の定めのない雇用契約と異ならない状態となっていたとはいえないが,原告が担当していた業務の恒常性および本件雇用契約更新時のX・Y学院間の合意内容,更新時のB事務局長等の説明等からすれば,Xには,本件雇用契約が締結された時点において,本件契約がなお数回にわたって継続されることに対する合理的な期待利益があるとされた例
2 嘱託職員の雇用継続期間の上限を3年とする本件人事委員会方針を理由に嘱託職員を雇止めとするためには,当該方針が採用された時点ですでにこれを超える継続雇用に対する合理的な期待利益を有していた職員に対しては,その方針を的確に認識させて納得を得る必要があるとされ,Xは人事委員会方針が採用され,その説明を受けた時点で,すでにこれを超える継続雇用に対する合理的な期待利益を有し,当該方針内容を的確には理解しておらず,ましてや納得などしていなかったのであるから,当該方針を一方的に適用して雇止めとすることは,Xの継続雇用に対する期待利益をいたずらに侵害するものであって許されず,またXの業務を本務職員Cに担当させるのであれば,あらかじめXに対し担当業務の変更を命じる等の手続きがとられるべきであって,それらの手続きを経ずに漫然とXを雇止めとすることは社会通念上相当とはいえず,そうすると,本件雇止めは,客観的に合理的な理由がなく,社会通念上相当とは認められないから無効であるとして,雇用契約上の地位確認請求および雇止め後の賃金請求が認められた例
3 Xは本件雇止め後に訴外会社で一定期間就労し,66万円の中間収入を得たものと推認されるところ,その額は当該期間のXの平均賃金の4割に相当する額をわずかに超えるが,Xはまた当該期間中の賃金として,平均賃金の算定基礎とならない期末手当21万余円を得ることとなるから,結局,当該収入額66万円の全額を控除することが相当であるとされた例
4 本務職員と嘱託職員という雇用形態は労基法3条の「社会的身分」に当たらず,このような雇用形態の違いから賃金面に差異が生じたとしても,同条に違反するということはできず,またわが国においては,長期雇用が予定されている労働者と短期雇用が予定されている有期雇用の労働者との間に,単純に,同一労働同一賃金の原則を適用することが公の秩序とはなっていないとして,Xの,嘱託職員と本務職員の賃金面における処遇格差は労基法3条の均等待遇の原則に反し,同一労働同一賃金の原則に反するとの主張が退けられ,不法行為に基づく損害賠償請求が棄却された例
【掲載誌】 労働判例981号63頁