運送保険の被保険者である荷送人が保険金の支払を受ける前に運送人に対する損害賠償請求権を放棄した場合と右運送保険の保険者の保険金支払義務
最高裁判所第1小法廷判決/昭和41年(オ)第1385号
昭和43年7月11日
損害賠償請求事件
【判示事項】 1、運送保険の被保険者である荷送人が保険金の支払を受ける前に運送人に対する損害賠償請求権を放棄した場合と右運送保険の保険者の保険金支払義務
2、荷送人が運送人に対する損害賠償請求権を放棄した旨の判断に経験則違背、理由不備の違法があるとされた事例
【判決要旨】 1、運送保険の被保険者である荷送人が、保険金の支払を受ける前に、商法第662条所定の保険者代位の対象となるべき運送人に対する損害賠償請求権を放棄した場合には、右運送保険の保険者は、右放棄にかかる損害賠償請求権の金額の限度において、保険金の支払義務を免れるものと解すべきである。
2、荷送人が、運送契約の締結の際に、運送人に対し、運送品の運送中の事故に関する運送保険契約を締結するよう申し出るとともに、右事故による損害は右保険契約に基づいて支払われる保険金のみをもつて填補することを約したと認められる場合でも、特段の事情のないかぎり、右事実関係だけから荷送人が運送人に対し右事故による一切の損害の賠償請求権を放棄する旨の意思表示をしたものと解することは、経験則に違背し、右判断には理由不備の違法がある。
【参照条文】 商法629
商法662
民法519
民事訴訟法185
民事訴訟法395-1
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集22巻7号1489頁