争議行為として船舶を占有する船員,組合役員らに対する,船舶所有者からの引渡請求が認容された例 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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争議行為として船舶を占有する船員,組合役員らに対する,船舶所有者からの引渡請求が認容された例

 

宮崎地方裁判所延岡支部判決/平成15年(ワ)第97号

平成16年11月25日

船舶占有回収請求

【判示事項】    (1) 争議行為として船舶を占有する船員,組合役員らに対する,船舶所有者からの引渡請求が認容された例

          (2) 海上労働の特殊性と船員法等の法令規定にかんがみると,雇入契約を結んだ船員による特定船舶の所持は,労務提供義務の履行として賃金支払いの根拠となるのみならず,契約期間中における生活の場に対する所持としての性格をも有するのであり,雇入契約に基づく船舶の占有権能があるとされた例

          (3) 船員の争議行為において,船舶を確保することが実効的であることは否定できないが,雇入契約ないしその趣旨に反する態様における占有使用は許されず,当該船舶を全面的かつ排他的に占有支配し,使用者の財産支配を完全に阻止することは許されないとされた例

          (4) 所有者の自由意思を高度に抑圧する態様の争議行為は許容すべき余地はなく,その目的,必要性を斟酌してもなお,社会通念上許容される範囲を逸脱したものとして,正当な争議行為とは認められないとして,雇入契約の解除が有効とされた例

          (5) 船員の雇入契約は雇用契約の存在を前提とするものであり,船舶所有者による雇用契約終了の意思は,同時に雇入契約終了の意思と認めることができるとされた例

          (6) 本件解雇通告以前に行われた当該船舶登記における船舶管理人変更の記載は,実体に合致しない不実の登記にすぎず,船舶管理人の地位はなお原告会社にあったのであり,雇入契約解除をなしうるとされた例

          (7) 船舶所有者と契約関係のない組合役員らについて,争議行為そのものが船舶の占有権原となり得るものとは考えがたいことに加え,正当な争議行為ではないから,占有正権原はないとされた例

【掲載誌】     労働判例902号117頁