相続財産の評価に当たって被相続人等が負担していた連帯保証債務が相続税法14条1項にいう確実な債務に当たらないとされた事例
東京高等裁判所判決/平成11年(行コ)第140号
平成12年1月26日
相続税更正異議処分取消、相続税更正処分取消請求控訴事件
【判示事項】 相続財産の評価に当たって被相続人等が負担していた連帯保証債務が相続税法14条1項にいう確実な債務に当たらないとされた事例
【判決要旨】 (1) 審査請求人がいかなる処分について審査請求をしているかについては、審査請求人の提出に係る審査請求書の記載を基準として定められるというべきであり、必ずしも審査請求書に記載された審査請求に係る処分欄記載の処分に限定されるものではないが、少なくとも、審査請求書の記載を合理的に解釈しても、不服を申し立てていると認められない処分については、審査請求の対象とされていないといわざるを得ない。
(2) 省略
(3) 国税通則法104条4項に規定するあわせ審理は、同1の国税について複数の更正決定等がされた場合、審理の重複、判断の矛盾、抵触等を避け、納税者の手数を軽減しつつ簡易迅速な権利救済を図るなどの趣旨から、国税不服審判所長等は、納税者が不服申立てをしていない他の更正決定等についても職権で審理を行うことができることとしたものであるが、あわせ審理された場合であっても、不服申立てのされていない他の更正決定等を取り消す必要がないときには、不服申立てがされた更正決定等についてのみ裁決をすることになるものと解される。
(4) 省略
(5) 連帯保証債務及び物上保証債務は、主債務者が主たる債務を履行した場合には、保証人がその責任を免れる性質のものであるから、将来、保証人がその債務を履行することになるかどうかは確実ではなく、仮にこれを履行しても、その履行による損失は、主債務者に対する求償権の行使により補填されるはずのものであるから、保証債務は、原則として、相続税法14条1項に規定する「確実と認められるもの」には該当しないが、相続開始時において、主債務者が弁済不能の状態にある場合には、保証人において保証債務の履行をしなければならないことが確実である上、履行後に主債務者に対し求償権を行使して損失のてん補を受けることが不可能であるから、このような場合には、例外的に、保証債務も確実な債務に該当するというべきである(相続税基本通達14-5参照)。
(6) 保証債務の主債務者が弁済不能の状態にあるかどうかは、当該債務者について破産、和議、会社更生又は強制執行等の手続が開始し、あるいは事業閉鎖等により債務超過の状態が相当期間継続して他から融資を受ける見込みもなく、再起の目途が立たないなど、主債務者に対し求償権を行使しても、事実上回収が不可能な状況にあることが客観的に認められるかどうかにより判断するのが相当である。
(7) 相続財産に係る保証債務の主債務者が弁済不能の状態にあるか否かの判断は、相続開始後の事情も間接事実として考慮することが許されるが、相続税法13条1項が、「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」を相続財産の価額から控除すると規定し、同法22条が「当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。」と規定している趣旨にかんがみれば、遺贈等の場合のように相続の開始があって初めて債務が発生するなどの特段の事情がない限り、右判断の基準時が相続開始時であることも明らかであり、相続開始後の一定時期を基準として、主債務者が弁済不能であったか否かを判断する余地はないというべきである。
(8) 省略
【参照条文】 相続税法13-1
相続税法14-1
相続税法22
国税通則法87-1
【掲載誌】 訟務月報46巻12号4365頁
判例タイムズ1055号130頁
税務訴訟資料246号212頁