基本給のうちの一定額を月間80時間分相当の時間外労働に対する割増賃金とすることは,公序良俗に違反するものとして無効とすることが相当であるとされた例
東京高等裁判所判決/平成29年(ネ)第5128号、平成30年(ネ)第3303号
平成30年10月4日
未払賃金等請求控訴,同附帯控訴事件
【判示事項】 1 実際には長時間の時間外労働を恒常的に労働者に行わせることを予定していたわけではないことを示す特段の事情が認められる場合はさておき,通常は,基本給のうちの一定額を月間80時間分相当の時間外労働に対する割増賃金とすることは,公序良俗に違反するものとして無効とすることが相当であるとされた例
2 被控訴人兼附帯控訴人(一審被告)Y社の賃金規程の規定ぶりからして,本件固定残業代の定めは,控訴人兼附帯被控訴人(一審原告)Xにつき少なくとも月間80時間に近い時間外勤務を恒常的に行わせることを予定したものといえ,現実の勤務状況も,そのような長時間労働を恒常的に行わせることが予定されていたことを裏付けるものであったとされた例
3 Y社における本件固定残業代の定めは,労働者の健康を損なう危険のあるものであり,公序良俗に違反するものとして無効とすることが相当であるとして,本件固定残業代の定めを有効とした一審判決を変更しXの請求が認められた例
4 月45時間の残業に対する時間外賃金を定額により支払う旨の合意があったと解することはできず,また部分的無効を認めると,とりあえずは過大な時間数の固定残業代の定めをしたうえで,それを上回る場合のみ残業手当を支払っておくとの取扱いを助長するおそれがあるから,本件固定残業代の定め全体を無効とすることが相当とされた例
【掲載誌】 労働判例1190号5頁