抵当権設定登記の抹消登記手続の申請に際し、司法書士事務所の職員が登記済証の真否、登記意思の確認を怠った過失があるとして、司法書士の不法行為責任が認められた事例
東京地方裁判所判決/平成15年(ワ)第26688号
平成17年11月29日
損害賠償請求事件
【判示事項】 抵当権設定登記の抹消登記手続の申請に際し、司法書士事務所の職員が登記済証の真否、登記意思の確認を怠った過失があるとして、司法書士の不法行為責任が認められた事例
【参照条文】 民法709
民法715
司法書士法2
【掲載誌】 判例タイムズ1232号278頁
LLI/DB 判例秘書登載
【解説】
1 Xは,平成14年10月10日,訴外A社に対し,4000万円を貸し付けたが,その際,訴外B所有の本件不動産について,A社に所有権を移転した上,Xのために,極度額6400万円,被担保債権の範囲を金銭貸借取引による一切の債権等とする根抵当権を設定するとともに,代物弁済予約契約を締結した。
しかし,Bは,訴外C社に対する求償債務を担保するため,本件不動産について,債権額5200万円とする第一順位の抵当権を設定し,その旨の登記が経由されていたため,Xは,司法書士であるYに対し,①C社を権利者とする抵当権設定登記の抹消申請,②BからA社への所有権移転申請,③Xを権利者とする根抵当設定登記申請,④Xを権利者とする代物弁済を原因とする所有権移転請求権仮登記申請(以下「本件各登記」という。)を依頼した。
そして,Yは,東京法務局世田谷出張所に,必要書類を提出して本件各登記の申請手続をした上,本件各登記が経由されたが,上記①のC社を権利者とする抵当権設定登記の抹消登記手続の申請に用いられたC社のY宛の委任状や本件登記済証が偽造であったため,C社から抵当権設定登記回復登記手続の承諾請求訴訟が提起され,C社の勝訴によりC社を権利者とする抵当権設定登記の回復登記が経由され,Xを権利者とする根抵当権設定登記は後順位となった。
そこで,Xは,Yに対し,登記申請に必要な書類が真正なものであることの調査や先順位抵当権者の抵当権設定登記の抹消登記申請の意思確認等を怠った注意義務違反があったと主張し,回収不能となった貸付金相当の損害等の賠償を請求した。
これに対し,Yは,本件登記済証は巧妙に偽造され,偽造との疑念を抱かせるような不自然さがみられなかったのであるから,これを看過したとしても義務違反があるとはいえないし,本件各登記の申請手続を委任された際,Xから,C社に対する債務は完済され,抵当権抹消登記に必要な書類は整っているとの説明を受けていたから,C社に対して登記意思を確認しなかったとしても義務違反はないなどと主張した。
2 本判決は,本件各登記の申請手続を依頼するまでの事実経過,本件各土地の申請手続当日の状況,C社による抵当権抹消登記の回復登記及び抵当権の実行等について認定した上,(1)C社を権利者とする抵当権設定契約証書には抵当権設定者の住所に明白な誤記があり,また,同契約証書の被担保債権の範囲に不自然な記載があるなど,本件登記済証には偽造を疑うに足りる事情があったにもかかわらず,Y事務所の職員は,これに気付かず看過したのであるから,本件登記済証の真否を確認すベき義務を怠った過失がある,(2)上記抵当権設定契約証書には明白な誤記や不自然な点がある上,抵当権設定登記の抹消登記手続に必要な書類を事前に送付しないなど不審を抱かせる事情があったにもかかわらず,C社に対して登記意思を確認しなかったのであるから,Y事務所の職員には,C社の登記意思を確認すべき義務を怠った過失がある,などと判断し,Yの不法行為責任を認めて,本訴請求を認容した。
●当職が原告代理人として、本件勝訴判決を取得しました。