配置転換命令が権利の濫用であるとして被告に対する原告ら(被告の従業者又は元従業員)の慰謝料請求が一部認容された事例
札幌地方裁判所判決/平成14年(ワ)第1958号、平成14年(ワ)第2672号
平成18年9月29日
配転無効確認等請求事件(第1事件,第2事件)
【判示事項】 配置転換命令が権利の濫用であるとして被告に対する原告ら(被告の従業者又は元従業員)の慰謝料請求が一部認容された事例
【参照条文】 民法709
民法710
【掲載誌】 判例タイムズ1222号106頁
労働判例928号37頁
労働経済判例速報1954号3頁
【解説】
1 本件は,被告の従業員あるいは元従業員である原告ら(X1ないしX5)が,被告の原告らに対する配置転換(以下「配転」といい,本件における配転を「本件配転」という。)命令は違法で無効であるとして,各配転命令によつて生じた精神的苦痛に対する慰謝料の賠償(原告1人につき300万円)等を請求した事案であり,本件の争点は,大きく分けて(1)本件配転命令の効力,(2)原告らの個別事情(配転の業務上の必要性や配転障害事由の有無,損害等)である。原告らは,争点(1)について,本件配転のもととなった被告における施策の違法性も主張しつつ,本件配転命令は,原告らと被告との間には勤務地や職種の限定の合意や慣行があること等により労働契約上無効であること,法令,判例に反して無効であること,権利濫用により無効であること等を主張していた。
2 本判決は,上記争点につき,要旨次のように判示し,被告に対する請求を一部(X1ないしX4につき各50万円及びX5につき100万円並びに遅延損害金)認容した。
(1)被告が策定した施策は,その経営判断に基づくもので,これを違法とすることはできない。また,原告らと被告との間で勤務地や職種の限定が合意され,あるいはそれらの限定が慣行となっていたことを認めることはできない。その他,本件配転が法令等に違反し無効であるということはできない。もっとも,使用者による配転は無制約に許されず,当該配転命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても,当該配転命令が他の不当な動機,目的をもってされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すベき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情の存する場合,当該配転命令は権利の濫用となる。(2)本件配転命令について原告らの個別事情を判断すると,原告X1ないしX4については,労働力の適正配置とはいえず,その他被告の合理的運営に寄与する点はなく,業務上の必要性が認められず,権利濫用である。原告X5については,本件配転のうち最初のものについては,業務上の必要性はあるものの,両親の介護という配転障害事由があり,権利濫用である。その損害額は,原告X1ないしX4については,50万円,原告X5については,100万円が相当である。