控訴人会社らが不動産の譲渡により発生したとして計上した固定資産売却損は、当該不動産の譲渡が、売買契約書が作成されていないこと、所有権移転登記がなされていないことなどから仮装のものであり固定資産売却損は生じていないとされた事例
広島高等裁判所判決/平成14年(行コ)第4号
平成15年6月13日
法人税の加算税賦課決定処分取消請求控訴事件
【判示事項】 (1) 控訴人会社らが不動産の譲渡により発生したとして計上した固定資産売却損は、当該不動産の譲渡が、売買契約書が作成されていないこと、所有権移転登記がなされていないことなどから仮装のものであり固定資産売却損は生じていないとされた事例(原審判決引用)
(2) 修正申告書は、納税者の任意の提出に任され、提出期限の定めもないのであるから、納税者は、税務職員からの修正申告の慫慂を受けても、それを十分に検討の上、納得できなければ、修正申告を行う必要はないものと考えられる反面、慫慂に従った修正申告を行う以上、原則として、慫慂の内容に納得したものと考えられるところ、控訴人会社らは税務職員が各不動産の売買取引の事実が認められないことを説明し、同売買が存在しないことを前提とする修正申告書を提出するよう慫慂したのに対し、いずれもこれに応じて修正申告書を提出したものであり、同各修正申告書の内容は、いずれも同売買が存在しないことを前提とするものであるから、控訴人会社らが同売買の不存在を自認したものと推認して然るべきものとされた事例(原審判決引用)
(3) 控訴人会社らは、買主である同族グループ法人と意思相通じて、それぞれ虚偽の取締役会議事録及び振替伝票を作成し、あたかも各不動産の売買が行われたかのように事実を仮装し、架空の固定資産売却損を損金の額に計上して、法人税の確定申告書を提出したものというべきであり、控訴人会社らのこの行為は、国税通則法68条1項の「事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当するものとされた事例(原審判決引用)
(4) 控訴人甲社の代表者に対する不動産の売買価格については、当初、当事者において認識した価格を下回る価格で取引を行っているが、その価格で取引を行っており、確定申告書記載どおり(鑑定価格どおり)であると認めることができ、実際の売買価格(査定価格)を仮装したとする課税庁の主張が排斥された事例
(5) 重加算税の賦課と過少申告加算税の賦課との関係
(6) 重加算税賦課決定処分の取消しを求める訴訟における審理の対象
(7) 控訴人甲社の代表者に対する不動産の売買に関し、仮装又は隠ぺいの事実は認められず、加重事由の存在を認めることはできないが、重加算税賦課決定処分の基礎となった控訴人甲社による修正申告が適法にされたことについては当事者間に争いがなく、過少申告加算税の賦課要件が存在すると認めるのが相当であるから、この部分については同賦課決定処分を取り消す理由はないとされた事例
【判決要旨】 (1)~(4) 省略
(5) 国税通則法65条の規定による過少申告加算税と同法68条1項の規定による重加算税とは、ともに申告納税方式による国税について過少な申告を行った納税者に対する行政上の制裁として賦課されるものであって、同1の修正申告又は更正に係るものである限り、その賦課及び税額計算の基礎を同じくし、ただ、重加算税は、過少申告加算税の賦課要件に該当することに加えて、当該納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出するという不正手段を用いたとの特別の事由が存する場合に、当該基礎となる税額に対し、過少申告加算税におけるよりも重い1定比率を乗じて得られる金額の制裁を課することとしたものと考えられるから、両者は相互に無関係な別個独立の処分ではなく、重加算税の賦課は、過少申告加算税として賦課されるべき1定の税額に前記加重額に当たる1定の金額を加えた額の税を賦課する処分として、過少申告加算税の賦課に相当する部分をその中に含んでいるものと解するのが相当である。
(6) 重加算税賦課決定処分に対する取消訴訟においては、加重事由の存否のみならず、過少申告加算税の賦課要件の存否も当然に審理の対象となり、審理の結果、過少申告加算税の賦課要件の全部又は一部が否定された場合には、加重事由の存否を問うまでもなく当然にその限度で重加算税の全部又は一部が取消しを免れないこととなるとともに、過少申告加算税の賦課要件の存在が認められ、加重事由の存否についてのみ処分庁の認定判断に誤りがある場合には、加算税中これに応じて減額されるべき部分についてのみ原処分を取り消し、その余については請求を棄却すべきものと解すべきである(最高裁昭和58年10月27日第1小法廷判決・民集37巻8号1196ページ参照)。
(7) 省略
【掲載誌】 税務訴訟資料253号順号9366