薬事法2条1項2号又は3号の医薬品にあたるとされた事例 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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最高裁判所第2小法廷決定/昭和54年(あ)第654号

昭和54年12月17日

薬事法違反被告事件

【判示事項】    薬事法2条1項2号又は3号の医薬品にあたるとされた事例

【判決要旨】    いわゆるPTP包装の施された本件糖衣錠剤は、その外観、形状等に照らすと血圧降下剤「リポクレイン錠」であるとの表示等をまつまでもなく、薬事法2条1項2号又は3号の医薬品にあたる。

【参照条文】    薬事法2-1

          薬事法12-1

          薬事法84

【掲載誌】     最高裁判所刑事判例集33巻7号939頁

          最高裁判所裁判集刑事216号611頁

          裁判所時報779号1頁

          判例タイムズ406号98頁

【解説】

 本件は、市販されている血圧降下剤「リポクレイン錠」の偽物を製造し、医薬品の無許可製造の罪に問われた事案である。

本件錠剤は、澱粉、ブドウ糖、ペプトン等を原料とする毒にも薬にもならないものであるが、医薬品に特有の包装方式であるPTP包装(片面が透明な塩化ビニールで、錠剤を入れる水疱状のポケツトがあり、他の片面をアルミ箔でふたをしたもの。

ポケツトを押すとアルミ箔が破れて錠剤がとび出すようになつている)を施されていた。

これにつき、血圧降下剤「リポクレイン錠」である旨の表示や効能書の添付等がなくとも、薬事法2条1項の医薬品に該当するか否かが争われ、原判決は同条1項2号の医薬品に該当するとしたが、本決定は、これを同条1項2号又は3号の医薬品にあたると認めたものである。

 薬事法2条1項2号、3号の医薬品に関する最高裁の先例としては、「牛胆」等が、その成分、効能、外観及び名称からみて、2号にあたるとした最決昭46・12・17刑集25巻9号1066頁があり、下級審のものとしては、東京高判昭53・12・25高刑集31巻3号363頁、東京地判昭51・11・25刑裁月報8巻11=12号509頁がある。

また、行政上の指導取締りの基準として、昭和46年6月1日厚生省薬務局長通達があり、これによれば、「人が経口的に服用する物が、薬事法2条1項2号又は3号に規定する医薬品に該当するか否かは、その物の成分本質、形状(剤型、容器、包装、意匠等。)及びその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量並びに販売方法、販売の際の演述等を総合的に判断して、通常人が2号又は3号の目的を有するものであるという認識を得るかどうかによつて判断すべきもの」とされており、前記判例等も、これとほぼ同様の判断基準に従つているようである。

 本決定は、とくに一般的な判断基準は示していないが、右判例、通達等と別段異る立場に立つものではなかろう。

むしろ、本決定の特色といえるのは、本件錠剤に、医薬品的な名称、効能効果、成分の表示等がないため、2号の「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物」であるのか、3号の「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」であるのかの区別をすることはできないが、明らかに医薬品的とみなされる外観、形状等から、2号又は3号の医薬品にあたると認めた点にある(薬事法12条1項、84条2号の構成要件は、「医薬品」の無許可製造であるから、右のような認定で十分であり、いわゆる択一的認定となるものではない)。

なお、上告趣意で争われていないため、判示されてはいないが、医薬品としての効能効果がないものであつても、薬事法2条1項2号、3号の医薬品と認める妨げとなるものでないことは、判断の前提とされていると解される。