最高裁判所第3小法廷判決/昭和58年(オ)第152号
【判決日付】 昭和59年4月10日
『昭和59年重要判例解説』民法事件
損害賠償請求事件
【判示事項】 宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事故につき、会社に安全配慮義務違背に基づく損害賠償責任があるとされた事例
【判決要旨】 会社が、夜間においても、その社屋に高価な反物、毛皮等を多数開放的に陳列保管していながら、右社屋の夜間の出入口にのぞき窓やインターホンを設けていないため、宿直員においてくぐり戸を開けてみなければ来訪者が誰であるかを確かめることが困難であり、そのため来訪者が無理に押し入ることができる状態となり、これを利用して盗賊が侵入し宿直員に危害を加えることのあるのを予見しえたにもかかわらず、のぞき窓、インターホン、防犯チェーン等の盗賊防止のための物的設備を施さず、また、宿直員を新入社員1人としないで適宜増員するなどの措置を講じなかつたなど判示のような事実関係がある場合において、1人で宿直を命ぜられた新入社員がその勤務中にくぐり戸から押し入つた盗賊に殺害されたときは、会社は、右事故につき、安全配慮義務に違背したものとして損害賠償責任を負うものというべきである。
【参照条文】 民法415
民法623
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集38巻6号557頁