夫である相手方から,妻である申立人に対する婚姻費用分担金の支払を定めるに当たり,申立人が居住していた自宅の住宅ローンの支払を相手方がしていた事情を考慮して金額を算定した事例
東京家庭裁判所審判/平成26年(家)第10127号
平成27年6月17日
婚姻費用分担申立事件
【判示事項】 夫である相手方から,妻である申立人に対する婚姻費用分担金の支払を定めるに当たり,申立人が居住していた自宅の住宅ローンの支払を相手方がしていた事情を考慮して金額を算定した事例
【参照条文】 民法760
家事事件手続法154
【掲載誌】 判例タイムズ1424号346頁
LLI/DB 判例秘書登載
【解説】
1 事案の概要
本件は,別居中の夫婦間において,妻であるAが,夫であるBに対し,婚姻費用分担金の支払を求める事案である。
事実関係の概要は次のとおりである。
(1) AとBは,婚姻後,子2人をもうけ,Bが住宅ローンを負担する自宅で生活してきたが,次第に不仲となり,Bが単身自宅を出る形で別居するに至った。
(2) その後,Aと子2人は,約2年間,自宅で生活した後,Aの実家に転居した。
(3) Bは,Aと子2人が自宅で生活している間,自宅の住宅ローンを全額負担してきた。住宅ローンの月額は6万7439円(ボーナス月は34万6341円)であった。
(4) 平成26年の年間収入は,Aが199万6113円,Bが763万6644円であった。
2 本審判の要旨
(1) 婚姻費用分担金の算定については,権利者と義務者の各総収入を基礎に,公租公課を税法等で理論的に算出される標準的な割合により算出し,職業費及び特別経費を統計資料に基づいて推計される標準的な割合により算出してそれぞれ控除して基礎収入の額を定め,その上で,権利者と義務者が同居しているものと仮定すれば,権利者のために充てられたはずの生活費の額を,生活保護基準等から導き出される標準的な生活費指数によって算出し,これから権利者の基礎収入を控除して算出するという,いわゆる標準算定方式(東京・大阪養育費等研究会「簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-」判タ1111号285頁以下参照。)が用いられることが多く,その養育費・婚姻費用算定表(以下「算定表」という。)が調停手続等でも広く用いられている。
(2) 本審判も,標準算定方式により婚姻費用分担金を算出するのが合理的かつ当事者の意向に沿うとして,当事者双方の各総収入を算定表に当てはめ,標準的な婚姻費用分担金を算出している。
その上で,本審判は,標準算定方式が,別居中の権利者世帯と義務者世帯が統計的数値に照らして標準的な住居費をそれぞれ負担していることを前提に標準的な婚姻費用分担金の額を算定するという考え方に基づくものであることを踏まえ,Aが自宅で生活していた期間の婚姻費用分担金を定めるに当たっては,当事者の公平を図る見地から,Bが,Aとの別居後も,Aが居住する自宅に係る住宅ローンを全額負担していた事情を考慮して,算定表から導かれる標準的な額から,Aの年間収入に対応する標準的な住居関係費を控除するのが相当であると判断した。