不動産競売についての予納金及び登録免許税の納付による支出と所得税上法の必要経費 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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最高裁判所第1小法廷決定/昭和57年(あ)第166号

【判決日付】    昭和59年3月6日

所得税法違反、法人税法違反被告事件

【判示事項】    不動産競売についての予納金及び登録免許税の納付による支出と所得税上法の必要経費

【判決要旨】    不動産競売についての予納金及び登録免許税の納付による支出は、所得税法上の必要経費にあたらない。

【参照条文】    所得税法35

          所得税法37-1

          競売法33-2(昭和54年法律第4号により廃止)

          民事執行法14

          民事執行法42

          民事執行法194

【掲載誌】     最高裁判所刑事判例集38巻5号1921頁

          最高裁判所裁判集刑事236号131頁

          裁判所時報885号4頁

          判例タイムズ532号140頁

          判例時報1122号171頁

          金融法務事情1078号117頁

 

【解説】

 一 本件は、所得税ほ脱等の事案であるところ、ある年分の総所得金額の計算に関し、非営業的に行つていた貸金の回収のために不動産の任意競売を申し立てた際の競売費用の予納金及び右競売申立の嘱託登記のための登録免許税の納付による支出が、貸金によつて得た雑所得の計算上、右納付の年において控除すべき必要経費(所得税法35条、37条1項参照)にあたるかどうかが争点とされたものである。

 二 不動産競売の申立をするに際しては、その費用を予納し(民訴費用法12条。なお、民事執行法14条参照。本件は、民事執行法施行前の、競売法施行当時の事案である)、右競売申立の嘱託登記につき登録免許税を納付しなければならない(登録免許税3条、23条)。

右予納金は競売費用に充当されるものであり、登録免許税も競売費用となるものであるが、競売費用は、最終的には目的物件不動産の所有者が負担すべきものであつて、その不動産の売却代金から優先的に償還されることが予定されている(競売法33条2項。なお、民事執行法194条、42条参照)。

 三 叙上のような競売費用の性質に照らし、かつ、不動産競売手続を全体としてみるならば、本件のような予納金及び登録免許税の納付による支出は、原則として、最終的には目的物件の所有者が負担すべきものを、競売申立人が立替払いするものであつて、資産としての性格を有する「立替金」と見るべきものと解される。

もつとも、競売費用は、競売の取下げや手続の取消決定があるなどして、最終的に競売申立人が負担すべきこととなる場合がありうるが、このような場合には、その年における「資産損失」として処理すべきことになるものと思われる。

ちなみに、当該支出が「立替金」と認められるためには、最終的負担者、負担額が明らかでなければならないと解されるところ、本件予納金及び登録免許税の納付の時には、最終的な負担者、負担額が未確定であつて(したがつて、必要経費と見ようにも、「債務が確定した」ものとはいえないことになる。

必要経費に算入すべき費用についての債務の確定の判定につき、所得税基本通達逐条解説37―2の解説参照)、このような場合、「仮払金勘定」で処理するのが合理的であろう。

 四 右のとおりであるとすると、本件予納金や登録免許税の納付を「立替金」あるいは「仮払金」のいずれと見るにせよ、これを所得税法の雑所得の計算上の「必要経費」とすることはできないことは明らかであるといえよう。