宗教法人において、主に葬式、法事等の受付事務に従事していた被控訴人が、労基法上の労働者に当たるとして未払い賃金等の支払い請求を認めた1審判決が支持された例
高松高等裁判所判決平成8年11月29日
未払賃金請求控訴事件
【判示事項】 宗教法人において、主に葬式、法事等の受付事務に従事していた被控訴人が、労基法上の労働者に当たるとして未払い賃金等の支払い請求を認めた1審判決が支持された例
【判決要旨】 1、宗教法人において,同宗教の信者であり,かつ,奉仕活動に多数参加していた者が,継続的に一定の時間受付事務等に従事し,一定の金員の交付を受ける場合において,同人の給与体系がいわゆる日給月給制であり,実際の支給額から源泉徴収,年末調整,社会保険料の控除が行われていること,勤務時間が定められていること等,給与水準,勤務時間,出勤日,業務内容が一般の企業における労働条件と同様なものといえ,また,宗教法人に雇用された労働者として雇用保険の手続がされていることから,同人は,労働基準法上の労働者に当たるとした事例
2、宗教法人において受付業務に従事する者がした勤務時間外における受付事務や,宿直勤務につき,前記宗教法人において労働基準法41条や32条の2の前提となる行政官庁の許可や変形労働時間制の定めがあることを認めることはできず,勤務の実態として,宿直の際の電話の応対という業務もあり,前記宗教法人の宗教施設から自由に外出することは許されないのであるから,前記労働は拘束時間として時間外労働,深夜労働に当たるとした事例
【掲載誌】 労働判例708号40頁
(1) 本件は、日蓮正宗の末寺である被告(控訴人)において、勤務時間(午前9時から午後5時まで)外に受付事務等に従事したり、宿直した原告(被控訴人)に対して、被告が時間外および深夜労働に対する賃金の支払いをしなかったとして、その支払いを請求したものである。
1審判決は、原告が宗教法人における労働者性についての判断基準を示した行政通達(昭27・2・5基発49号)にいう「宗教上の奉仕乃至修行であるという信念に基づいて一般の労働者と同様の勤務に服し賃金を受けている者」に当たるとし、給与、勤務時間、出勤日、業務内容を検討したうえ、原告は労基法上の労働者に当たるとするのが相当であると判断し、時間外労働、深夜労働に該当する労働時間についての未払い賃金の支払い請求を認めた。
(2) 本判決は、被控訴人の本件各種の行事の際の早出、残業、宿直が控訴人の指揮監督のもとに行われたこと、被控訴人の労働日数、時間外、深夜労働時間数の具体的認定、控訴人の主張する変形労働時間制の採用について、「控訴人の場合は就業規則の定めによらないことが許される(労基法89条)にしても、労基法施行規則12条の解釈として、就業規則に準じたものを定めて労働者に周知させなくてはならないと解すべきところ、…出勤日や宿直日については、毎月末頃翌月分を相談の上決めていたというに過ぎないから、このことによって右就業規則に準じたものを定めて周知したと認めるのは困難である」ことを付加した以外は、基本的に原判決を支持し、控訴人の控訴を棄却した。