元請会社及び第1次下請会社の第2次下請会社労働者に対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償責任 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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元請会社及び第1次下請会社の第2次下請会社労働者に対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償責任が認められた事例(過失相殺5割)

 

東京高等裁判所判決/平成28年(ネ)第5367号

平成30年4月26日

労働災害損害賠償請求控訴事件

【判示事項】    元請会社及び第1次下請会社の第2次下請会社労働者に対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償責任が認められた事例(過失相殺5割)

【参照条文】    民法415

          民法709

          民法715

          会社法350

          労働安全衛生規則518

          労働安全衛生規則519

          労働安全衛生規則520

          労働安全衛生規則521

【掲載誌】     判例タイムズ1469号93頁

          判例時報2436号32頁

          労働判例1206号46頁

(1) 事案の概要 本件は,独立行政法人都市再生機構(以下,「UR」)が被控訴人(1審被告)日本総合住生活(株)(以下,「Y1社」)に発注し,Y1社が被控訴人(1審被告)(株)昭立造園(以下,「Y2社」)に下請発注したUR A1団地における植物管理工事(以下,「本件工事」。本件工事の現場を以下,「本件工事現場」)に,Y2社の下請会社である被控訴人(1審被告)(有)グリーン計画(以下,「Y3社」)の従業員として従事していた控訴人(1審原告)甲野太郎(以下,「X1」)が,本件工事の作業中に,欅の木(以下,「本件樹木」)から転落して受傷し(この転落事故を以下,「本件事故」),四肢体幹機能障害等の後遺障害が生じたとして,X1は,上記Y1社~Y3社の3社およびY3社の当時の代表者であった被控訴人(1審被告)丁原四郎(以下,「Y4」。Y1社~Y3社と合わせて以下,「Yら」)に対し,安全配慮義務違反を理由とする債務不履行または不法行為等に基づき,これによって生じた損害額から労災保険給付金等を控除した残額および弁護士費用の合計額の1部1億6090万4846円およびこれに対する遅延損害金ならびに将来の看護・介護費用の連帯支払いを求め,X1の妻である控訴人(1審原告)甲野花子(以下,「X2」。X1と合わせて以下,「Xら」)が,Yらに対し,同じく,慰謝料および弁護士費用の合計550万円およびこれに対する遅延損害金の連帯支払いを求めた事案である。

 Y1社は,URの発注に基づき,公設団地等の維持管理業務を行うことを主たる業務とする株式会社であり,Y2社は,造園事業,土木建築請負業等を目的とする株式会社であり,Y3社は,土木建築工事業等を目的とする有限会社である。Y4は,本件事故当時,X1に対し,樹木の伐採や剪定等の造園工事に関する教育指導を行うとともに,本件樹木で自らも作業しながら同人に対して作業指示を行っていた。

 本件樹木の種類は欅であり,大きさは樹高約13メートル,幹周約1.2メートル,枝長約6メートルであり,本件工事において指定された剪定作業の種類は「基本剪定」(剪定する樹木の本来の形を基本的に残しつつ,骨格となるべき枝の生育を促進させるように剪定する方法)であった。

 X1は,平成24年12月頃から,Y3社の従業員として,本件工事現場において,Y4の指揮のもとで作業に従事していたが,25年1月10日午後4時35分頃,本件樹木に登り枝を剪定する作業(以下,「本件作業」)に従事していたところ,本件事故により頸髄損傷の障害を負い,26年4月2日,完全四肢麻痺の後遺障害の症状固定の診断がなされた。

 本件事故当時,本件工事のような樹木の剪定作業においては安全器具として安全帯が使用されていたが,2丁掛けの安全帯を常態的に使用する慣習はなく,本件作業当時も1丁掛けの安全帯が使用されていた。

 なお本件事故後,Y3社は,X1に対し,1256万0290円の仮払金を支払っている。

 Xらは,Yらには,安衛法および安衛則(特にその518条および519条)に定める墜落災害を防止する義務が不法行為法上の注意義務および労働契約上ないし信義則上の安全配慮義務としても存在するなどとして,その違反を主張したが,Y3社は義務違反を否定し,Y2社およびY1社は,そもそもかかる義務の前提となる特別な社会的接触の関係がないなどと主張し争った。

 本件の主な争点は,(1)Y3社およびY4の責任の有無,(2)Y2社の責任の有無,(3)Y1社の責任の有無,(4)過失相殺である。