金融商品取引法166条1項5号(インサイダー取引)の解釈につき,上場会社等と契約締結の交渉をして | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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金融商品取引法166条1項5号(インサイダー取引)の解釈につき,上場会社等と契約締結の交渉をしている法人の役員等がその者の職務に関し重要事実を知ったとして同号に該当するというには,単にその者が職務の遂行上重要事実を知ったというのでは足りず,当該契約の締結もしくはその交渉または履行に関して他の役員等が知った重要事実が法人内部でその者に伝わったということのできる場合でなければならないというべきであるが,その者がその者の職務に関し知ったといえる限りは,重要事実の伝達ないし流出の方法や経路は問わないものと解されるとされた例

 

東京高等裁判所判決/平成28年(ネ)第1730号、平成28年(ネ)第3767号

平成29年3月9日

地位確認等請求控訴,同附帯控訴事件

【判示事項】    1 金融商品取引法166条1項5号の解釈につき,上場会社等と契約締結の交渉をしている法人の役員等がその者の職務に関し重要事実を知ったとして同号に該当するというには,単にその者が職務の遂行上重要事実を知ったというのでは足りず,当該契約の締結もしくはその交渉または履行に関して他の役員等が知った重要事実が法人内部でその者に伝わったということのできる場合でなければならないというべきであるが,その者がその者の職務に関し知ったといえる限りは,重要事実の伝達ないし流出の方法や経路は問わないものと解されるとされた例

2 被控訴人兼附帯控訴人(一審原告)Xが「社外の者に対し未公表の法人関係情報を伝え,受領者がそれをもとにインサイダー取引を行ったとして証券取引等監視委員会の勧告を受け,報道された」こと(第1懲戒事由),および「顧客の情報も漏洩していた」こと(第2懲戒事由)が,就業規則所定の懲戒事由に該当するとして,控訴人兼附帯被控訴人(一審被告)Y社がXに対して行った懲戒解雇につき,第1懲戒事由については,就業規則所定の懲戒事由に該当するものとは認められず,第2懲戒事由については,その一部(他社のアナリストとの会話)が就業規則所定の懲戒事由に該当するものと認められるものの,上記会話を懲戒事由として懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇処分を行うことは重きに失することが明らかであるうえ,手続的にも妥当性を欠くものであって,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認めることができず,懲戒権を濫用したものとして無効であるとした一審判断が維持された例

3 懲戒解雇は,就業規則上企業秩序違反に対する制裁罰として規定されており,普通解雇とは制度上区別されているのであるから,当然に本件懲戒解雇の意思表示に普通解雇の意思表示が予備的に包含されているということはできないし,また,本件懲戒解雇にかかる辞令書にも,「懲戒規定に基づき懲戒解雇に処す」との記載がある一方,予備的にも普通解雇の意思表示をする旨の記載は認められないのであるから,本件懲戒解雇の意思表示に普通解雇の意思表示が内包されているものとは認められないとされた例

4 本件懲戒解雇の不法行為該当性につき,Xには第1懲戒事由に関連して著しく不適切な行為があり,また,第2懲戒事由にも軽視することができない違反行為が含まれていたのであり,Xが相応の処分を受けること自体はやむを得ないといえる事情があったこと等からすると,Y社による懲戒解雇処分が無効と評価されるとしても,そのことから直ちに,本件懲戒解雇が不当な意図に基づく見せしめの処分であったと認めることはできないとした一審判断が維持された例

【掲載誌】     労働判例1160号28頁