佐賀地方裁判所判決/平成26年(ワ)第394号
平成28年10月18日
【判示事項】 化学物質過敏症に罹患している旨説明していたにもかかわらず,事前通告せずにシロアリ駆除の薬剤を散布した従業員の行為に過失があるとされた事例
【参照条文】 民法709
【掲載誌】 判例タイムズ1443号231頁
判例時報2347号122頁
主 文
1 被告は,原告に対し,30万1585円及びこれに対する平成23年12月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを100分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,原告に対し,3132万5702円及びこれに対する平成23年12月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
第2 事案の概要
1 本件は,原告が化学物質過敏症である旨被告に説明していたにもかかわらず,被告の従業員であるA(以下「A」という。)が原告の住居の隣家においてシロアリ駆除の薬剤を散布した結果,体調不良に陥るとともに,住居が化学物質に汚染され居住できなくなり,治療費や住居の使用利益相当額の損害等が生じた旨主張し,使用者責任による損害賠償請求権に基づき,賠償金3132万5702円及びこれに対する不法行為の日である平成23年12月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
(後略)
【解説】
1 事案の概要
本件は,原告が,原告の隣家において外壁塗装等を請け負っていた被告の従業員に対して,原告が化学物質過敏症に罹患している旨説明し,シロアリ駆除の薬剤(本件薬剤)を散布する際には風向きに配慮するとともに,事前に通告するよう求めていたにもかかわらず,同従業員が原告に事前通告することなく薬剤散布をした結果,原告が同薬剤に曝露し,体調不良に陥ったなどと主張して,使用者責任に基づく損害賠償請求権に基づき,被告に対し,賠償金の支払いを求めた事案である。
被告は,原告が本件薬剤を散布した時点では自宅にいたことを否認するとともに,被告従業員に対して,トルエン及びキシレンに過敏に反応するので,それらを含有する薬剤を使用しないで欲しい旨を要請していたところ,本件薬剤にはトルエン及びキシレンは含まれていなかったのであるから,被告に過失は存在しないことなどを主張して,これを争った。