会社は,従業員Xが退職勧奨を拒否したことに対する報復として退職に追い込むため,または合理性に乏しい大幅な賃金の減額(賃金を2分の1以下へと大幅に減額)を正当化するために配転命令(大阪営業部から大阪倉庫への配転命令)をした~新和産業事件
大阪高等裁判所判決平成25年4月25日
賃金等請求控訴事件
【判示事項】 1 配転命令権は,無制約に行使することができるものではなく,これを濫用することは許されないところ,業務上の必要性が存しない場合または業務上の必要性が存する場合であっても当該配転命令が他の不当な動機や目的をもってされたものであるときもしくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情の存する場合でない限りは,当該配転命令は権利の濫用になるものではないとされた例
2 控訴人(1審原告)Xは,被控訴人(1審被告)Y社に入社後,結果的に十分な営業成績を残すことができなかったが,これはXに割り当てられた業務の性質によるものであり,Xの適性や能力によるものとは認められないうえ,Y社は長期間にわたりXの営業成績を問題視していなかったのであるから,本件配転命令当時,Xは総合職としての適性および能力を欠いていなかったものとされた例
3 Y社は,Xが退職勧奨を拒否したことに対する報復として退職に追い込むため,または合理性に乏しい大幅な賃金の減額を正当化するために本件配転命令をしたことが推認されることから,本件配転命令は,業務上の必要性とは別個の不当な動機および目的によるものということができるとされた例
4 本件配転命令は,業務上の必要性が乏しいにもかかわらず,業務上の必要性とは別個の不当な動機および目的のもとで行われたものであり,かつ,Xに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるから,権利の濫用として無効であるとされた例
5 本件配転命令と一体としてなされた本件降格命令についても権利の濫用として無効であるとして差額賃金の支払いを命じた1審の判断が維持された例
6 本件配転命令は,社会的相当性を逸脱した嫌がらせであり,Xの人格権を侵害するものであって民法709条の不法行為を構成するものであると認め,Y社に対して慰謝料(50万円)の支払いが命じられた例
7 Xの賞与請求権は,Y社が支給すべき金額を定めることにより初めて具体的権利として発生するものと解されるところ,現実の支給額である7万円を上回る額の支給を決定したことを認めるに足りる証拠はないとして,未払賞与の支払請求が棄却された例
8 Y社には,Xについて総合職であることを前提に人事考課査定および調整をしたうえで具体的な支給額を決定し,支給日までに支払うべき労働契約上の義務があったにもかかわらず,これを行わずに運搬職であることを前提に賞与額の決定をしたことは,使用者としての裁量権の範囲を逸脱したもので,Xの有する賞与の支給を受ける権利を侵害したとして不法行為の成立を認め,査定係数の下限値0.6を乗じて算出した金額に8割を乗じた額について損害賠償の支払いを命じた例
【掲載誌】 労働判例1076号19頁