東京高等裁判所判決平成8年3月27日
各損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
退職勧奨の方法が違法であり不法行為を構成すると判断された例としては、管理職者が連日勤務時間内外にわたり執拗に希望退職届を出すよう強く要請し、希望退職募集期間経過後は暴力行為や仕事差別などの嫌がらせによって退職を強要したことについて、暴力行為等に対し200万円、仕事差別に対し100万円の慰謝料、弁護士費用として金30万円、合計330万円の損害賠償請求を認定したエール・フランス事件(東京高判平8・3・27労判706号69頁)
【判示事項】 1 録音テープの証拠能力と信用性が認められた例
2 職場内での暴力行為につき、控訴人会社及び控訴人従業員らが被控訴人に対し連帯して損害賠償の責任を負うとされた例
3 職場内での仕事差別につき、控訴人会社及び控訴人支店長が被控訴人に対し連帯して損害賠償の責任を負うとされた例
4 その他の被控訴人の請求が棄却された例
【判決要旨】 1、外国航空会社の日本支店旅客課において接遇関係の事務を担当していた従業員(グランド・ホステス)の職務内容を変更して,従前の仕事と比較すれば単純な作業である統計作業に約7箇月間にわたり従事させたことにつき,統計作業は全く無意味,無価値であるとまではいえないとしても実質上の有用性はかなり低いものであつたのであるから,不当な差別であるとして,不法行為を構成するとした事例
2、希望退職者の募集に応じない従業員に対して,同人を退職に追い込むために,職場の上司と所属組合の幹部であつた者らが共謀の上,連日にわたって行った暴力行為や嫌がらせ行為は,就業時間中に就業場所において行われた被用者同士の行為であり,同人の損害は会社の事業の執行行為と密接な関連を有すると認められる行為によって加えられたものであるということができるから,会社の「事業ノ執行ニ付キ」行われたといえ,また,実際上の有用性がかなり低い統計作業へ仕事を変更するなどの仕事差別は,上司により会社の「事業ノ執行ニ付キ」行われたものであることは明らかであるとして,会社は民法715条1項の使用者責任を負うとした事例
2、暴力行為等をしたとされる者の同意を得ないで録音された録音テープにつき,周囲に味方する者もいない孤立した状況で行われた暴力行為等を確たる証拠として残す手段としては,録音という方法が有効かつ簡単な方法であり,録音テープの証拠能力を否定すれば違法行為を究明できないことからすると,暴力行為等をしたとされる者の同意を得ないで暴力行為等の状況を録音する行為は著しく反社会的な行為とはいえず,録音された内容が暴力行為等の存在を直接証するものでない場合においても,証拠能力は認められるとされた事例
【掲載誌】 労働判例706号69頁