納税義務者から確定申告を委託されて所得税ほ脱の違反行為をした者が所得税法244条1項にいう「代理人」に当たるとして事業主でない納税義務者に所得税ほ脱犯の成立を認めた事例
最高裁判所第3小法廷決定平成9年10月7日
所得税法違反被告事件
【判示事項】 納税義務者から確定申告を委託されて所得税ほ脱の違反行為をした者が所得税法244条1項にいう「代理人」に当たるとして事業主でない納税義務者に所得税ほ脱犯の成立を認めた事例
【判決要旨】 自己所有の土地を夫に依頼して売却した主婦が、自己の所得税の確定申告の手続一切を代行するように夫に委託したところ、夫が情を知らない税理士に右売却に係る譲渡収入の一部を除外した虚偽の内容の確定申告書を作成、提出させて所得税の一部を免れたなど判示の事実関係の下においては、夫は所得税法244条1項にいう「代理人」に当たり、納税義務者である主婦は、事業主でなくても、「代理人」に対し選任、監督等において違反行為を防止するために必要な注意を尽くさなかった過失がないことの証明がされない限り、同法244条1項、238条に基づく所得税ほ脱犯の刑責を免れない。
【参照条文】 所得税法238-1
所得税法244-1
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集51巻9号716頁