所得税法第2条第1項にいう所得の帰属する「個人」の意義。 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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最高裁判所第2小法廷判決昭和37年6月29日

所得税法違反

【判示事項】 1 所得税法第2条第1項にいう所得の帰属する「個人」の意義。

2 所得税法第26条第1項(申告義務の規定)の合憲性。

【判決要旨】 1 所得税法2条所定の課税対象となっている個人の所得とは、当該個人に帰属する所得を指称するものであることは勿論であるが、その所得の外見上又は法律形式上の帰属者が単なる名義人に過ぎずして、他にその終局的実質的享受者が存在する場合、そのいずれを所得の帰属者として課税すべきであるかについて問題を生ずる。思うに、国家経費の財源である租税は専ら担税能力に即応して負担させることが、税法の根本理念である負担公平の原理に合し且つは社会正義の要請に適うものであると共に、租税徴収を確保し実効あらしめる所以であって、各種税法はこの原則に基いて組み立てられており、又これを指導理念として解釈運用すべきものと云わねばならない。さすれば、所得の帰属者と目される者が外見上の単なる名義人にしてその経済的利益を実質的、終局的に取得しない場合において、該名義人に課税することは収益のない者に対して不当に租税を負担せしめる反面、実質的の所得者をして不当にその負担を免れしめる不公平な結果を招来するのみならず、租税徴収の実効を確保し得ない結果を来す虞があるから、かかる場合においては所得帰属の外形的名義に拘ることなく、その経済的利益の実質的享受者を以って所得税法所定の所得の帰属者として租税を負担せしむべきである。これがすなわちいわゆる実質所得者に対する課税(略して実質課税)の原則と称せられるものにして、該原則は吾国の税法上早くから内在する条理として是認されてきた基本的指導理念であると解するのが相当である。

2 所得税法の申告義務の規定が憲法38条1項に反するものでないことは当裁判所の判例の趣旨(昭和27年(あ)第838号、同32年2月20日大法廷判決、刑集11巻2号802頁参照)に照らし明らかである。それ故所論違憲の主張は採るを得ない。

【参照条文】 所得税法2

       所得税法3の2

       所得税法26-1

       憲法38-1

【掲載誌】  最高裁判所裁判集刑事143号247頁