共同相続した土地上に建物を建築した相続人による土地所有権の時効取得 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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大阪高等裁判所判決平成29年12月21日

土地所有権移転登記手続請求控訴、同附帯控訴事件

【判示事項】 共同相続人の一人による相続不動産の占有(共同相続した土地上に建物を建築した相続人による土地所有権の時効取得)につき、取得時効の成立を否定した事例

(判決文より抜粋)被控訴人は、太郎(被相続人)の共同相続人の一人として本件土地の持分10分の1を有するにすぎないのであるから、本件土地の持分10分の9についての被控訴人の占有は、権原の性質上客観的にみて所有の意思がないのであって、被控訴人の本件土地に対する占有は、単独所有者としての所有の意思を伴うものということはできず、これを自主占有ということはできない。

 共有土地に共有者の一人が建物を建築したが、他の共有者との間で建物所有を目的とした土地の賃貸借又は使用貸借が合意されていないという場合、一般的にいえば、他の共有者の持分が無断で使用されていると考えられるのである。したがって、建物を建築してその敷地に対する独占的な占有を開始したという事実があっても、そのことから当然に、当該占有開始時に土地の占有権原が当然に自主占有になったということはできないし、単独所有の土地となったものと信じて当該不動産の占有を始めたなどの自主占有事情が直ちに基礎づけるものでもない。

【参照条文】 民法162

       民法185

【掲載誌】  判例時報2381号79頁