関連会社に対して融資を行い、同社に対する債権を放棄したことについて、株式会社の取締役に善管注意義 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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関連会社に対して融資を行い、同社に対する債権を放棄したことについて、株式会社の取締役に善管注意義務違反及び忠実義務違反は認められないとして、原告らの請求を棄却した事例

 

大阪地方裁判所判決平成14年1月30日

『平成14年重要判例解説』商法3事件

ロイヤルホテル株主代表訴訟事件

株主代表訴訟事件

【判示事項】 一 ホテル事業を営む株式会社が、関連会社に対して融資を行い、同社に対する債権を放棄したことについて、株式会社の取締役に善管注意義務違反及び忠実義務違反は認められないとして、原告らの請求を棄却した事例

二 関連会社に対する融資が、商法260条2項1号にいう「重要ナル財産ノ処分」に該当しないとした事案

三 株式会社の代表取締役が、同社を代表し、他社を経由して、自己が代表取締役を務める関連会社に対して融資をしたことが、商法265条一項所定の取引に該当しないとした事例

四 株式会社の代表取締役が、同社を代表し、自己が代表取締役を務める関連会社に対する債権を放棄したことが、商法266条1項4号(利益相反取引)にいう「前条第一項ノ取引」に該当しないとした事例

【判決要旨】 形式的には商法265条1項(利益相反取引)に該当する取引であっても、実質的にみて、当該取引が会社の利益を図る目的でされたものであり、かつ、当該取引の内容、効果等その客観的な性質に照らし会社と取締役又は第三者との間に利益相反をもたらさないと評価される場合にまで、あえて損害賠償責任を負担させることは予定されていないというべきである。そこで、このような場合、当該取引は商法266条1項4号(利益相反取引)にいう「前条一項ノ取引」には該当せず、同号に基づく損害賠償請求権は発生しないものと解するのが相当である。

【参照条文】 商法265-1

       商法266-1

       商法267

【掲載誌】  判例タイムズ1108号248頁