銀行が,輸入業者の輸入する商品に関して信用状を発行し,当該商品につき譲渡担保権の設定を受けた場合において,上記輸入業者が当該商品を直接占有したことがなくても,上記輸入業者から占有改定の方法によりその引渡しを受けたものとされた事例
最高裁判所第2小法廷決定平成29年5月10日
『平成29年重要判例解説』民法5事件
債権差押命令取消及び申立て却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
【判示事項】 銀行が,輸入業者の輸入する商品に関して信用状を発行し,当該商品につき譲渡担保権の設定を受けた場合において,上記輸入業者が当該商品を直接占有したことがなくても,上記輸入業者から占有改定の方法によりその引渡しを受けたものとされた事例
【判決要旨】 銀行であるXが,輸入業者であるYの輸入する商品に関して信用状を発行し,これによってYが負担する償還債務等に係る債権の担保として当該商品につき譲渡担保権の設定を受けた場合において,次の(1)及び(2)の事情の下では,Yが当該商品を直接占有したことがなくても,Xは,Yから占有改定の方法により当該商品の引渡しを受けたものといえる。
(1) XとYとの間においては,輸入業者から委託を受けた海運貨物取扱業者によって輸入商品の受領等が行われ,輸入業者が目的物を直接占有することなく転売を行うことが一般的であったという輸入取引の実情の下,上記譲渡担保権の設定に当たり,XがYに対し輸入商品の貸渡しを行ってその受領等の権限を与える旨の合意がされていた。
(2) 海運貨物取扱業者は,金融機関が譲渡担保権者として当該商品の引渡しを占有改定の方法により受けることとされていることを当然の前提として,Yから当該商品の受領等の委託を受け,当該商品を受領するなどした。
【参照条文】 民法183
民法304
民法369(譲渡担保)
民事再生法45
民事再生法53-1
民事再生法53-2
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集71巻5号789頁