完全週休2日制の実施に伴う就業規則の変更
最高裁判所第3小法廷判決平成12年9月12日
北都銀行(旧・羽後銀行)事件
時間外手当請求事件
『平成12年重要判例解説』労働法事件
【判示事項】 1 本件就業規則の変更につき、週単位、年単位でみれば所定労働時間が減少し、時間当たりの基本賃金額が増加し、しかも、連続した休日の日数が増加することからすれば、平日の労働時間の延長(平日10分、「特定日」=年間95日1時間)による不利益およびこれに伴うある程度の時間外勤務手当の減収を考慮しても、被上告人らが本件就業規則変更により被る実質的不利益が大きくないとされた例
2 本件就業規則の変更は、被上告人らの被る不利益が全体的、実質的に必ずしも大きくなく、他方、上告人銀行としては、完全週休2日制の実施に伴い平日の労働時間を画一的に延長する経営上の必要性が大きく、変更後の内容も相当性があるといえるので、右不利益を被上告人らに法的に受忍させることもやむを得ない程度の必要性のある合理的内容のものと認められた例
3 本件就業規則の変更につき、被上告人らの被る不利益の内容、程度、上告人にとっての変更の必要性、変更の内容、労働組合等との交渉の経緯等を総合判断すれば全体として合理性を欠くとして右変更の効力を認めなかった原審の判断が、違法として破棄された例
4 被上告人らの本件請求を棄却した1審判決が正当とされた例
【判決要旨】 銀行が、就業規則を変更し、完全週休2日制を実施する一方で、平日の所定労働時間を毎週最初の日及び毎月25日から月末までは60分間、その他は10分間延長した場合において、平日の所定労働時間の延長は労働条件を不利益に変更するものであるが,右就業規則の変更により年間所定労働時間は相当減少し休日が増加するから、従業員の被る不利益は全体的、実質的にみて必ずしも大きいものではなく、他方、右銀行にとって避けて通ることができなかった完全週休2日制を実施するためには平日の所定労働時間を画一的に延長する経営上の必要性があり、右変更後の所定労働時間は当時の我が国の水準としては必ずしも長時間ではないなど判示の事情の下では、右変更は、合理的内容のものであり,これに同意しない従業員に対しても効力を生ずる。
【参照条文】 労働基準法(平成10年法律第112号による改正前のもの)89-1
労働基準法93
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事199号501頁
裁判所時報1275号423頁
労働判例788号23頁
労働経済判例速報1742号25頁