最高裁判所第1小法廷決定平成22年8月25日
売却許可決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
『平成22年重要判例解説』民事訴訟法7事件
【判示事項】 1 担保不動産競売事件の期間入札において,執行官が,最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し,他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合に,執行裁判所等が執るべき措置
2 担保不動産競売事件の期間入札において,自らが最高の価額で買受けの申出をしたにもかかわらず,執行官の誤りにより当該入札が無効と判断されて他の者が最高価買受申出人と定められたため,買受人となることができなかったことを主張する入札人が,この者の受けた売却許可決定に対し執行抗告をすることの許否
3 担保不動産競売事件の期間入札において,入札書を封入した封筒に記載された事件番号が,これと共に提出された入札保証金振込証明書に記載されたそれと一致しなくても,当該入札が無効であるということはできないとされた事例
【判決要旨】 1 担保不動産競売事件の期間入札において、執行官が、最高の価額で買受けの申出をした入札人の入札を誤って無効と判断し、他の者を最高価買受申出人と定めて開札期日を終了した場合には、執行裁判所は、誤って最高価買受申出人と定められた者に対する売却を不許可とした上で、当初の入札までの手続を前提に改めて開札期日および売却決定期日を定め、これを受けて執行官が再び開札期日を開き、最高価買受申出人を定め直すべきである。
2 担保不動産競売事件の期間入札において、自らが最高の価額で買受けの申出をしたにもかかわらず、執行官の誤りにより当該入札が無効と判断されて他の者が最高価買受申出人と定められたため、買受人となることができなかったことを主張する入札人は、この者が受けた売却許可決定に対し執行抗告をすることができる。
3 担保不動産競売事件の期間入札において、入札書を封入した封筒に記載された事件番号が、これとともに提出された入札保証金振込証明書に記載されたそれと一致しなくても、次の(1)~(3)の事実関係のもとでは、当該入札が無効であるということはできない。
(1) 上記封筒に記載された開札期日の日時には、年の記載を除き、上記封筒に記載された事件番号と一致する事件番号の担保不動産競売事件の開札期日が指定されていた。
(2) 上記入札保証金振込証明書に記載された事件番号、物件番号および開札期日は、いずれも上記(1)の担保不動産競売事件のそれと一致していた。
(3) 上記封筒に記載された事件番号に対応する担保不動産競売事件の開札期日が上記封筒に記載された開札期日またはこれに近接する日に指定されていたことはうかがわれない。
(1につき補足意見がある)
【参照条文】 民事執行法64
民事執行法188
民事執行法69
民事執行規則46
民事執行規則173-1
民事執行法74-1
民事執行規則47
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集64巻5号1482頁