最高裁判所第2小法廷判決平成23年12月16日
請負代金請求本訴,損害賠償等請求反訴事件
『平成24年重要判例解説』民法1事件
【判示事項】 1 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗に反し無効とされた事例
2 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする公序良俗違反の請負契約に基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事の施工の合意が公序良俗に反しないとされた事例
【判決要旨】 1 注文者と請負人が建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約を締結した場合において、次の(1)~(3)など判示の事情のもとでは、上記請負契約は、公序良俗に反し、無効である。
(1) 上記請負契約は、建築基準法所定の確認および検査を潜脱するため、法令の規定に適合した建物の建築確認申請用図面のほかに、法令の規定に適合しない建物の建築工事の施工用図面を用意し、前者の図面を用いて建築確認申請をして確認済証の交付を受け、いったんは法令の規定に適合した建物を建築して検査済証の交付も受けた後に、後者の図面に基づき建築工事を施工することを計画して締結されたものである。
(2) 上記建物は、上記(1)の計画どおり建築されれば、耐火構造に関する規制違反や避難通路の幅員制限違反など、居住者や近隣住民の生命、身体等の安全に関わる違法を有する危険な建物となるものであった。
(3) 請負人は、建築工事請負等を業とする者でありながら、上記(1)の計画をすべて了承し、上記請負契約の締結に及んだのであり、請負人が上記建物の建築という注文者からの依頼を拒絶することが困難であったというような事情もうかがわれない。
2 建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする公序良俗違反の請負契約に基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事は、同工事が区役所の是正指示や近隣住民からの苦情など様々な事情を受けて別途合意の上施工されたものであり、その中には上記本工事の施工によって既に生じていた違法建築部分を是正する工事も含まれていたという事情のもとでは、上記追加変更工事の中に上記本工事で計画されていた違法建築部分につきその違法を是正することなくこれを一部変更する部分があるのであれば、その部分は別の評価を受けることになるが、そうでなければ、その施工の合意が公序良俗に反するものということはできない。
【参照条文】 民法90
民法632
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事238号297頁
裁判所時報1546号18頁
判例タイムズ1363号47頁
判例時報2139号3頁
金融法務事情1959号102頁