国立大学法人が所持し役職員が組織的に用いる文書についての公務秘密文書性 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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最高裁判所第1小法廷決定平成25年12月19日

文書提出命令申立て却下決定に対する抗告審の一部変更決定に対する許可抗告事件

『平成26年重要判例解説』民事訴訟法3事件

【判示事項】 1 国立大学法人が所持しその役員又は職員が組織的に用いる文書についての文書提出命令の申立てと民訴法220条4号ニ括弧書部分の類推適用

2 民訴法220条4号ロにいう「公務員」には国立大学法人の役員及び職員も含まれるか

【判決要旨】 1 国立大学法人が所持し,その役員又は職員が組織的に用いる文書についての文書提出命令の申立てには,民訴法220条4号ニ括弧書部分が類推適用される。

2 民訴法220条4号ロにいう「公務員」には,国立大学法人の役員及び職員も含まれる。

【参照条文】 国立大学法人法2-1

       民事訴訟法220

       独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律2-1

       国立大学法人法19

【掲載誌】  最高裁判所民事判例集67巻9号1938頁

       判例タイムズ1423号138頁

       判例時報2292号55頁

       労働判例1102号5頁

 1 本件は,国立大学法人において作成され,同法人が所持する文書について,文書提出義務の除外事由を規定した民訴法220条4号ニの自己利用文書該当性及び同号ロの公務秘密文書該当性が争われた事案である。

  本件の本案事件は,国立大学法人Y大学の人文学部教授であるXらが,同学部の学部長等からアカデミック・ハラスメントを受けたとしてYに苦情を申し立てたところ,Yの設置するハラスメントの防止,対策,調査のための各委員会の運営及び調査の方法が不当であったために不利益を被ったなどと主張して,Yに対し,再調査の実施,損害賠償の支払等を求めたというものである。Xらは,本案事件において,委員会の運営及び調査の方法が不当であったことを立証するために必要であるとして,Yの所持に係る委員会の調査報告書,ヒアリング記録及び委員会の議事録等の各文書(以下「本件各文書」という。)につき,民訴法220条4号の除外事由のいずれにも当たらない同号の文書に該当することなどを主張して文書提出命令の申立てをした。これに対し,Yは,本件各文書が同号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(自己利用文書)又は同号ロの「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し,又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」(公務秘密文書)に該当するなどとして,それらについて文書提出義務を負わないと主張した。

  原決定は,国立大学法人が民訴法220条4号ニ括弧書部分の「国又は地方公共団体」に当たるか,又は,これが類推適用されると解すべきであるから,本件各文書について同号ニには該当しないと判断した上,本件各文書の一部につき同号ロの公務秘密文書該当性を肯定し,その余の文書はこれに当たらないとして,Yにその提出を命じた。これに対してYが許可抗告を申し立て,許可されたのが本件である。本決定は,民訴法220条4号ニの該当性に関し,決定要旨1のとおり判示して,これと同旨の原審の判断を正当として是認することができるとし,同号ロの該当性については,決定要旨2のとおり,国立大学法人の役員及び職員が同号ロにいう「公務員」に含まれると判示した上で,公務秘密文書性に関する原審の判断についても正当として是認することができるとして,本件抗告を棄却する決定をした。