金融法について研究が進んでいない理由
Ⅰ 扱うべき法律・論点が広く多いこと
・学問領域が広い(アメリカ法では、連邦法、州法、行政法規、行政告示、業者団体などのガイドライン、それぞれについての裁判例)
・扱う論点が多い
・法の領域の外延があいまい
・法領域の概観を網羅すること自体大変である
→しかし、扱うべき法律・テーマが多いということは、学問的には、未解明の論点が多いということでもあり、将来的には開拓すべき分野であることをも意味する。
例えば、以下の分野にまたがる。
・公法として、憲法、行政法、税法、外国為替貿易法
・民事法として、担保法、金融契約法、金融事故に基づく損害賠償請求権、保険法、信託法など、
・民事手続法として、損害賠償の民事訴訟法やADRなど、、
・刑事法として、金融機関の役員についての刑事責任
・産業法として、資格付与・行為規範・同業者監督団体の組織法をも兼ねる事業規制法
・国際公法として、通商法など
・国際私法として、国際取引法、国際民事訴訟法、国際商事仲裁など
・会計学、簿記など
Ⅱ 特殊で高度な他の分野の知見が必要であること
・学際的分野であり、法律以外に、簿記、会計、金融、為替、貿易、商業などという専門的な知識経験が必要であり、文献などを読む必要がある。
・金融業は、公的融資(日本政策銀行、商工中央金庫)、公的信用補完(預金保険機構、信用保証協会、貿易保険)、銀行、保険、信託、証券や金融商品取引業、貸金業、協同組合形態の金融など、さまざまな業種があり、法的規制は同一ではない。
→学際的分野ということは、複数の学問が交錯する分野であり、単純な分野ではないから、学問上の競争相手が少なく、学問的には、未解明の論点が多いということでもあり、将来的には開拓すべき分野であることをも意味する。
Ⅲ 関係者
・関係者(監督官庁、金融機関などの会社、産業従事者、投資家、顧客、保険会社、法曹、研究者)の間に利害対立がある
なお、日本では、金融行政は金融庁、上場証券は証券取引所規則による。
アメリカでも、監督官庁は複数である。
また、金融従事者は細分化されている。
→利害が対立する関係者からの見方ができることによって、さまざまな考え方が習得できる。
→なお、法曹倫理的には、利害対立する当事者それぞれについて、1人以上づつの法律家が必要となる。
Ⅳ 文献
・金融関係の文献への投稿・掲載・執筆方法は、法律文献と異なる
→論文の執筆方法は技術的な問題に過ぎない。
→掲載や発表の機会に恵まれないという点については、下記Ⅴを参照。
・主要なロースクールレビューには金融法関連の論文の掲載が少ない
→しかし、現在では、アメリカやヨーロッパのロースクールの紀要・ローレビューに掲載された論文や裁判例は、原文(例えば、英語)のままで、レキシス=ネキシス、ウェストローという検索サイトで、検索することが可能です。
裁判例や論文の全文検索、キーワード検索、引用された論文、他の論文を引用している論文、論文に掲載されている裁判例も検索可能です。
Ⅴ 実際的理由
・金融関係者に法律の文献を読むことが期待できない
→これは雑誌・書籍の売れ行きを心配してのことであろうか。
現在であれば、インターネット・電子書籍という簡便な方法がある。
Ⅵ 司法試験との関係
・金融法が将来的に司法試験の科目として採用されることが期待できないこと
→金融法に強い弁護士を大量に育成するために、司法試験科目とすることも考えられる。
→また、公法・民事法・刑事法の必須科目において、例えば、金融法に関する問題を出題することも考えられる。
Ⅶ 教育と教員
・ロースクールで金融法を設置している学校は少ない。
→しかし、全国の主要な大学の経済学部・会計学部・商学部・法学部、経済大学院(MBA)・会計大学院・法科大学院において、金融法を設置科目としておき、専任教員を義務付ければ、教育面や教員面での研究を促進することが期待できよう。