日本スペイン法研究会『現代スペイン法入門』
嵯峨野書院、2010年
上記書籍のうち、以下の部分を読み終えました。
第1章 スペインの歴史
第3章 民法(物権法以外)
Ⅲ 債務・契約法
スペイン法は、日本民法と類似の点が多数あるが、大きく異なる点もある。
・売買
特殊な売買として、割引販売、プロモーション販売、自動販売機の販売、移動販売について、スペイン法では立法により対応している。
しかし、日本では、これらについては、私法で特に規制する法律は、動産について、消費者契約法・特定商取引法・割賦販売法以外には、存在しない。
これらに加えて、営業所以外の場所での販売勧誘などについては、不動産を対象とする宅地建物取引業・金融商品を対象とする金融商品取引法や銀行法などの各種の事業法による規制はある。
・事務管理と不当利得
スペイン民法では、事務管理と不当利得については、準契約として法的構成されている。
これに対して、日本民法では、これらは、契約に基づく債権ではなく、不法行為とともに、法律により発生する「法定債権」として考えられている。
第11章 労働法
1976年頃からの共和国制度への移行に伴い、労働法も整備されるようになった。1978年スペイン憲法でも、労働者の権利が明記されるようになった。
スペインの労働法が規定する労働形態は、複雑で多数の法律からなる。
例えば、日本には存在しない雇用形態として、前任者からの引継ぎ労働契約、人材育成契約などが挙げられる。日本でも、類似の事実上の雇用形態はあるが、法律面で立法されているわけではない。
労働法が、国家の経済政策と深くかかわり、暫新的に労働者保護の傾向に立法され、使用者・労働者との利益を調整する性質のため、複雑な点は、ある意味当然であろう。
スペインの労働時間は週当たり40時間とされている。
日本での労働時間は、おおむね1996年から、週当たり40時間である。
なお、賃金水準は、現地の通貨との換算レートと現地の物価によって、日本との比較ができる。
EU法で、EU域内の各国家で共通する法律が適用されるように努力されている結果のためか、ドイツ労働法と同様の制度が存在する。
例えば、労働者代表が会社の経営に参画することが保障されている制度は、ドイツ法やスペイン法には存在するが、日本の労働法と大きく異なる点である。
付録 スペイン法研究に役立つウェブサイト