私が読んだ憲法の本
私は、司法試験用のメインのテキストとして佐藤幸治、伊藤正己を読んだ。
また、人権論・違憲審査基準の参考書として、芦部も、一部読んでみたが、芦部説は、判例や上記の2冊のテキストとは、やや考え方が違うようなので、判例・上記のテキストを中心に精読した。
私は、法学部時代に指定テキストであった浦部、また、法学部時代の必修科目であった「外国公法(憲法など)」の参考書として樋口も読んだが、司法試験対策としては、必要ない。
もっとも、公務員試験では、佐藤幸治、芦部はほとんど通用していないらしく、判例に従うのが良いであろう。
憲法
〔体系書〕
佐藤幸治『日本国憲法論』(法学叢書)成文堂(2011年)
元・京都大学教授。
旧著『憲法』(第3版、1995年。青林書院。絶版)の実質的な改訂版。
旧著は、芦部が刊行されるまでは、定番の基本書だった。
解釈論は精密で、論理的。
情報量がかなり多い。
伊藤正己『憲法』弘文堂(1995年)
元・最高裁判事。
なお、最高裁判事時代の少数意見集『裁判官と学者の間』有斐閣(1993年、OD版 2001年)がある。
縦書き700頁弱と厚い本だが、読みやすい。
浦部法穂『憲法学教室』日本評論社(2006年)
論理的で明快だが独自説が多い。
芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』岩波書店(2011年)
芦部は1999年他界。
記述は簡潔で、ある程度の実力がなければ読みこなせない。
内容はかなり古く、おおむね平成以降の議論には対応していない。
芦部信喜『憲法学I・II・III』有斐閣(1992年ー2000年)
芦部『憲法』の人権論を補うための体系書。
自説についての説明は意外に多くない。収録は居住移転の自由まで。
芦部信喜『憲法判例を読む』岩波書店(1987年5月)
市民セミナーでの講演を収録。芦部・違憲審査基準論の入門書。
なお、芦部は、一時期、放送大学の教授でもあり、私は、テレビ放送(無料)で公開講義に接する機会があった。
〔その他〕
樋口陽一『憲法』創文社(2007年)
体系書とは性格を異にし、司法試験テキスト向きとはいえないが(違憲審査基準論が弱い)、教養としては読むに値する。
本書以外ではなかなか目に触れないような、歴史的知識・比較法(外国の憲法)を補うことができる。
網羅性は一段劣る。
同著者の体系書として『現代法律学全集2 憲法I』青林書院(1998年)、『法律学大系 国法学-人権原論』有斐閣(2007年)がある。
執筆者も教科書として意図していないため、その内容は大陸法系の憲法学の理解を追求し極めて高度である。
大石眞・石川健治編『憲法の争点(新・法律学の争点シリーズ3)』有斐閣(2008年)
学者による論点集。
〔コンメンタール〕
芹沢斉・市川正人・阪口 正二郎編『新基本法コンメンタール 憲法』日本評論社(2011年)
最新の判例・学説を網羅している。
解説はやや物足りないが、客観性が高く情報量は多いので、条文ごとに疑問点が生じた場合に調べる辞書としては良い。
〔判例集〕
長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿『憲法判例百選I・II』有斐閣(2013年)
判例評釈集としては、解説が玉石混交ではという疑問もあったようである。