山川隆一『条文から学ぶ労働法』
有斐閣、2011年
上記書籍のうち、以下の部分を読み終えました。
第1章 労働基準法
第2節 最低賃金法
第3節 賃金等支払確保法
第4節 労働安全衛生法
第2章 労働契約法
第1節 労働契約法
なお、年齢による差別禁止の根拠は、雇用対策法10条である。
労働契約というためには、①使用従属関係、②労務提供の対価を使用者が決定する権限を有していることであると論者は指摘している。
従来の通説は、請負・委任・労働者派遣などとの区別のメルクマールとして、使用従属関係という基準を用いてきた。
使用従属関係は、以下のような労働条件や要素を考慮していた。
・金銭的(対価)、
・時間的(労働時間の拘束性・管理)、
・場所的(勤務場所の拘束性・管理)、
・労働の内容、
・使用者の指揮命令、
・労働者の裁量性など。
しかし、近年、労働法では、典型的な従属的とはいえないような労働条件、例えば、
・労働時間裁量性
・変形労働時間制度、
・事業場以外での労務(外回りの営業マンなど、在宅勤務)、
・労働内容の裁量性(研究職、高度な仕事内容のホワイトカラーなど)、
・成果主義賃金、
・ストックオプションなど、
のように多様な労働条件が現れた。
そのため、判例では、使用従属関係の要素のうち、労務提供の対価を使用者が決定する権限を有していることを重視する傾向が強い。
要件事実的にいえば、労働者が使用者に有償で労務の提供をすることを約束し、労務の提供を行い、賃金を得ることと整理されるであろう。
有償ということは、賃金を得て、という意味と同義であり、有償契約である雇用契約の特色である。
なお、委任契約は民法の規定の上では、無償の場合も含まれる。
また、ボランティアと区別する意味でも、賃金は重要である。
請負・有償の委任の場合には、請負人・受任者にも、仕事・役務の対価の決定権があるので、雇用とは区別する意味がある。
第3章 会社分割に伴う労働契約承継法
・会社分割に伴う労働契約承継法
なお、同法附則4条参照。? M&Aに関連する条文。
・平成12年改正(旧)商法附則7条
第4章 公益者通報保護法
・通報先は、労務提供先、行政機関、外部機関(メディアなど)がある。
労務提供先に対する通報よりも、後2者に対する通報が許される要件は若干過重されている。
労務提供先には、直接の雇用者、派遣先、労務を提供している外部の取引先(ただし、下請業者のように、下請業者自体が勤務先となっているので、労務を提供していない場合を除く。)がある。
・公益情報を通報した者に対する不利益処分をすることは同法では刑事罰の対象とされていないが、労働法(例えば、労働基準法など)や原子炉等規制法などの個別法には実例がある。
第5章 労働者災害補償保険法
・職業性疾病
ちなみに、本書では紹介されていないが、チェーンソーによる白ろう病が最高裁で労働災害と認められてから、職業性疾病と認定されている。
・健康診断の費用
労災保険法では、二次健康診断の費用が支給されるが、労働安全衛生法66条1項の一次健康診断の費用は労働者または健康保険の負担となる。
・通勤災害
通勤災害について、本書では紹介されていないが、介護を要する親類の家を労働者が経由した事例で、通勤途中と認めなかった裁判例もある。
・労災保険の特別加入制度
本書では特に指摘されていないが、労災保険に特別加入できる個人事業者・一人親方などの業種などには限定があり、立法上の不備となっている。