4 議決権制限株式
(1) 概要
株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある種類の株式をいいます(会社法108条1項3号)。制限は、すべての事項について議決権がないとすることも、一定の事項についてのみ議決権がないとすることもできます。旧商法では、発行済株式総数の2分の1までという発行制限がありましたが、会社法の下では、公開会社のみこの制限に服します(会社法115条)。非公開会社でも、将来的に一部の株式に譲渡制限の定めがないこととなった場合には、この規制に服することになります。
(2) 事業承継との関係
相続によって株式が分散することに伴い議決権も分散することによって、後継者が株式の過半数を保有することができなくなります。そこで、後継者以外に相続させる株式を議決権制限株式とすれば、議決権が分散することはありません。つまり、議決権のある株式を後継者に集中させる一方、財産を議決権制限株式として後継者以外の相続人に分配することができるのです。
また、議決権制限株式は、株主提案権(会社法303条1項)、議案提出権(会社法304条1項)も認められていないので、議決権制限株式を取得した後継者以外の相続人から後継者の相続人に横槍を入れることを防ぐことができます。これらの権利は議決権の存在を前提とする権利だからです。
もっとも、議決権制限株式保有者に不満が残るというデメリットがあります。それゆえ、議決権制限株式について取得請求権をつけること等により、議決権制限株式保有者の不満を解消することができますが、会社に株式を買い取る余裕がないとできませんし、取得請求権を得た非後継者から買取請求が相次げば会社の運転資金に支障がでることに注意が必要です。
また、議決権制限株式を配当優先株式とすることも考えられますが、中小企業の場合には、実際には配当を行わない場合も少なくありません。配当優先株式としても、配当を行うかどうかはその都度株主総会で議決することになりますから、実効性は高いとはいえません。
(3) 導入方法
議決権制限株式を新たに発行する場合には、発行可能種類株式総数および以下の事項を定款に定めることが必要です(会社法108条2項3号イロ)。
(ⅰ)株主総会において議決権を行使することができる事項 (ⅱ)当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件 |
また、当該完全無議決権株主に損害を及ぼすおそれがある場合には、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じないのが原則ですが(会社法322条1項)、かかる決議を不要とする定款の定めをおくこともできます(会社法322条2項)。これにより、経営権を後継者に集中させつつも、無議決権株主からの無用な横槍により事業運営に支障をきたすことを防ぐことができます。
(4) その他
民法編で触れた通り、相続内容が相続人の遺留分を侵害しないよう配慮しなければなりません。一般的には、議決権制限株式は普通株式に比べて相対的に低く評価される可能性が高いゆえ、後継者以外の相続人には議決権制限株式を多く取得させる方がよいでしょう。
【コラム】議決権制限株式の価額の評価方法
国税庁によれば、相続評価の場合には、無議決権株式も普通株式と同様に評価するのが原則ですが、配当優先であること等一定の条件を充たす場合には、相続時の納税者の選択により、全体の合計額を固定することとして、無議決権株式については普通株式評価額から5%を評価減することも可能とされています。この場合には、評価減分を議決権株式に加算しなければなりません(平成19年2月26日国税庁回答)。このように、議決権制限株式の価額は、その内容如何によっては普通株式より低額に評価される可能性があります。 (ⅰ)無議決権株式の評価算式 株式の評価額×無議決権株式 無議決権株式と普通株式×0.95 (ⅱ)普通株式の評価算式 株式の評価額×普通株式 無議決権株式と普通株式×1.05 |
(定款案) (発行可能種類株式総数及び発行する各種類株式の内容) 第○条 当会社の発行可能種類株式総数は、次のとおりとする。 ① A種類株式 ○○○株 ② B種類株式 ○○○株 2 B種類株式を有する株主(以下「B種類株主」という。)は、株主総会において、次に掲げる事項を除き、議決権を行使することができない。 (ア)会社法第185条に規定する株式無償割当て (イ)当会社の株式を引き受ける者の募集 (ウ)当会社の新株予約権を引き受ける者の募集 (エ)会社法第467条第1項に規定する事業譲渡等 (オ)合併 (カ)会社分割 (キ)株式交換 (ク)株式移転 |