4 遺言の方式 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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4 遺言の方式

 遺言は、遺言者の真意を確保し、同時に偽造を防止するため、厳格な要式行為となっています(民法960条)。遺言の方式には、普通方式と特別方式がありますが、事業承継との関連で問題となるのは、普通方式ですから、以下、普通方式について説明します。

1)自筆証書遺言

 自筆証書遺言とは、遺言者が、その全文を自筆で作成するものです。

自筆証書遺言は、証人の立会いなく自分一人で書くことができ、費用もかからず、遺言の存在自体も秘密にできるという長所があります。

 しかし、遺言者が自ら遺言書を保管しなければならないため、遺言書を紛失したり、遺言者の死後、発見されないことも起こりえます。

 また、偽造・変造の危険もあり、その有効性が争われることもあります。

 さらに、自筆証書遺言では、相続開始後、家庭裁判所に提出して、検認手続を経なければなりません(民法1004条)。

 検認手続とは、遺言の偽造・変造、隠匿等を防止するために、遺言書の形式を調査確認し、検認調書を作成する手続をいいます。遺言の有効、無効を審査するものではありません。この手続を怠ると5万円以下の過料に処せられます(民法1005条)が、遺言の効力自体には影響はありません。この検認手続を行うためには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を揃える必要があり、大変な時間と労力がかかります。これらのことから、自筆証書遺言は財産の種類が少なく遺言の内容が単純であるような場合であって、かつ、遺言の書き方をチェックできる人が周りにいる場合にのみ利用するのがいいでしょう。

【コラム】 自筆証書遺言の方式

 自筆証書遺言は、最も簡単に作成することができる遺言です。その方式は、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、押印するだけで足ります(民法9681項)。

 自筆証書遺言の方式として、自書が要件とされる趣旨は、筆跡によつて本人が書いたものであることを判定でき、それ自体で遺言が遺言者の真意に出たものであることを保障することにあります(最判昭和62108民集4171471頁)。そして、自筆証書遺言は、他の方式の遺言と異なり証人や立会人の立会を要しない等、最も簡易な方式の遺言であるが、それだけに偽造、変造の危険が最も大きく、遺言者の真意に出たものであるか否かをめぐって紛争の生じやすい遺言方式であるといえるから、自筆証書遺言の本質的要件ともいうべき「自書」の要件については厳格な解釈を必要とするとされます(前掲最判昭和62108)。

 自筆証書遺言の方式として、押印が要件とされる趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性および真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあります(最判平成元・216民集43245頁)。

(ⅰ)全文の自書

 パソコンやタイプライターによって作成されたものは「自書」の要件を満たさず無効ですし、録音テープ・ビデオによる遺言も編集・改ざんのおそれがあり無効です。

 なお、カーボン複写の方法による遺言については、「自書」の方法として許されないものではないとの判例(最判平成51019家裁月報46427頁)があります。

(ⅱ)日付の自書

 日付は、遺言能力の有無や遺言が複数ある場合における先後の判断をするうえで重要なものとなります。日付も「自書」する必要がありますから、ゴム印等による記入は無効です。

 また、日付の記載により、年月日が特定可能とならなければなりませんから、年月のみで日が記載されていない遺言(最判昭和521129家裁月報304100頁)や「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された遺言(昭和54531民集334445頁)も無効です。

(ⅲ)氏名の自書

 氏名は遺言者を特定するために要求されるものですから、戸籍上の氏名でなくても(大阪高判昭和601211家裁月報391148頁)、また、通称名であっても(大判大正473民録211176頁)有効です。

(ⅳ)押印

 押印は、実印に限らず、認め印でも構いません。また、指印でも有効です(前掲最判平成元・216)。

2)秘密証書遺言

 秘密証書遺言とは、公証人や証人を前に封印した遺言書を提出して、遺言の存在は明らかにしながら、その内容を秘密にして遺言書を保管することができる方式の遺言です。

 秘密証書遺言の長所は、遺言の内容を秘密にし、かつ、遺言の存在は明らかにしておくことができる点に尽きます。

 なぜなら、その作成自体については公証人の関与がありませんので、方式の不備があれば、無効となる可能性があり、紛失や偽造・変造の危険があること、家庭裁判所での検認が必要であることは、自筆証書遺言と変わらないからです。

 そもそも、事業承継を考える場合、後継者を明らかにして、事前に相続人や関係者に対してよく説明をして、その納得を得ていることが重要です。

 遺言の存在を明らかにしながら、その内容を秘密にしておくことは、推定相続人は果たして期待通りの遺産をもらえるのか疑心暗鬼となったり、あるいは、相続開始後、期待通りの相続財産をもらえなかったりして、かえって、争いの火種を作ることにもなりかねません。

 したがって、秘密証書遺言は、事業承継を目的とした遺言としては、あまりおすすめできる方法ではありません。なお、費用は定額で11000円です(公証人手数料令28条)。

3)公正証書遺言

 公正証書遺言とは、公正証書により作成される遺言のことをいいます。

 公正証書遺言は、遺言作成について正確な知識を有している公証人が作成するものですから、内容的な面でも形式的な面でも、遺言に不備が生じることはほとんどありません。また、公正証書遺言は、作成後は公証役場で保管されるため、紛失や偽造・変造の危険がありません。

 そして、家庭裁判所での検認も不要になります。したがって、公正証書遺言であれば、直ちに、相続に関する手続を進めることができます。

 作成の際に費用がかかり、手続が面倒ということがありますが、相続紛争防止のためにも、公正証書遺言を利用することをおすすめします。

 なお、公正証書遺言は、被相続人が死亡した場合には戸籍謄本等の添付があれば、どこの公証人役場においても作成の有無を検索することができます。詳しくは、日本公証人連合会の下記ホームページをご参照ください。http://www.koshonin.gr.jp/index2.html