【コラム】 死亡保険金を代償金支払いの財源として利用する方法
前述の通り、代償分割を利用できれば、後継者に事業を承継させる手段となりますが、代償金の支払いが後継者にとって大きな負担となります。 そこで、経営者が生前において相続人である後継者を保険金受取人とする保険契約を締結しておき、この保険契約により支払われる死亡保険金を代償金の支払いに充てる方法が考えられます。 (ⅰ)死亡保険金は遺産に属するか この点、死亡保険金は保険金受取人が契約により固有に取得するもので 保険金受取人の固有財産となります。したがって、保険金受取人を特定の相続人とした場合、保険金請求権は遺産分割の対象からは外されることになります(最判昭和48・6・29民集27巻6号737頁)。 相続人である後継者を保険金受取人とすれば、後継者は死亡保険金を遺 産分割の際の代償金支払いの財源とすることができます。 これに対して、被相続人自身を保険金受取人とした場合には、保険金請 求権は被相続人に帰属し、相続財産を構成することとなりますから、後継 者はその保険金を代償金支払の財源として利用することができなくなり ます。 (ⅱ)死亡保険金は特別受益か この点、死亡保険金請求権は、被保険者の相続財産に含まれるものでは ありませんし、被保険者が死亡したときに初めて発生するものですから、 遺贈や死因贈与に該当せず、保険契約者の払い込んだ保険料と等価関係に 立つものでもないので、原則として特別受益に当たりません。 もっとも、養老保険契約に基づく死亡保険金について、「民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産に当たらないと解するのが相当である。もっとも、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。上記特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合い等の保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。」とした判例(最決平成16・10・29民集58巻7号1979頁)があります。 (ⅲ)死亡保険金は遺留分算定の基礎財産に算入されるか この点、判例(最判平成14・11・5民集56巻8号2069頁)は、死亡保険金請求権は、指定された保険金受取人が自己固有の権利として取得するものであるから、遺留分算定の基礎となる財産である遺贈でもなく、贈与でもないとして、算入を否定しています。 ただし、私見ですが、前掲最決平成16・10・20の判例の趣旨によって、 民法903条類推適用により、特別受益とされた場合には、遺留分算定の基 礎となる財産に算入され、減殺請求の対象とされる可能性が考えられま す。 |