『クローン選抜』この言葉も、よく聞かれる言葉ですね。
この話をする前に、ブドウの増やし方について、見ていきたいと思います。昔からやられていた方法は、ブドウの実になった種を植えて増やすのではなく、ブドウを挿し木、あるいは取り木することによって繁殖するやり方です。
挿し木・・・木質になる前の健康な新梢を切り取り、これを植えて根づかせる方法。
取り木・・・長梢を下に曲げて一部を地中に埋めます。地中に埋められた部分から根が出てくるので、定着したら、元の樹と繋がっている部分を切断する方法。
伝統的にブドウは、この挿し木法や取り木法で繁殖が行われ、結果的に病害に対する耐性や高い収量、好ましい香りをもつ樹だけを使って繁殖させてきたのです
このやり方は、時が経つにつれて、継続的な突然変異によって同じ畑内の異なる樹で目立った違いが生じてくる、ということも同時に起こっていたのです。
いつも、人間の都合のいいように遺伝子が変わってくれればいいのですが、そうでないこともあり、そうではないことをできる限り取り除きたいということで、クローン選抜という技術が発達しました
この方法は、1950年代に広まった方法で、一代ごとに選抜されたクローンを生長させ、望ましい特質が最もよく表れている標本からのみ挿し木をするのです
この望ましい特質を決めているのは・・・・人間なのですが・・・。
このように、人間によって、操作された種族だけが畑に残ることになります。ここにも問題があり、操作したときから年月がたって、20年、30年後も同じようなブドウが求められているのか、ということです。
1つには、今のワインのスタイルが好きなのは今だけで、未来は人の好むワインのスタイルが変わっているかもしれないということです。
例えば、これは昔甘口のドイツワインが流行ったけど、今はドライの方が主流、という、そういう感じにも似ていると思うのですが。飲み手は常に変化しているので、何十年も同じブドウでいいのという心配もあります。
更に、地球温暖化のように、気候が今後変化することで、今もっているブドウの特性とは別の特性が必要になるかもしれない、という点です。
また、クローンを人が選抜することで畑における突然変異は減少するのですが、これは、一見、品質の劣るクローンが減るかもしれないのですが、特定の病気に対して弱かったりする場合があるということです。
生き物は、様々な生き物との間の刺激を受けることで、常に変化を生き抜く術をみにつけていきます。
ですから、遺伝子を固定してしまうことは、メリットでもあり、一方ではデメリットにもなりかねないということとになるのです。
しかし、遺伝子を同じくしたブドウは、開花や結実など同じ時期に起こり、同じ時期に収穫できるため、収穫も楽かもしれないです。それは、機械で一度に収穫するやり方に適しているといえます。
クローンを選抜するという行為を結局どのように受け止めるのかによって、結果に対する感情が違いそうですね。
これも、栽培者や造り手の思いがそこに反映される部分でもあると思いました