《映画「福田村事件」のあらまし その②》

◇薬売りの行商団15人の一行は、朝鮮飴売りの少女に出会う。
欲しがる子ども達に「何が入っているか分からない」という彌一だが、団長の新助は二袋を買う。
驚く妻のユキノにおれも「あいつらが売る薬に何が入っているか分からん」と言われたことがあると新助は言う。
行商団一行が野田村に入ると貞次の葬列に出会う。茂次・マスの後に続く村人たち。
醤油で賑わう野田の街は、醬油の匂いと共に赤旗や立て看板が見え革命歌が聞こえる。
◇9月1日 11時58分 野田村も激しい揺れがあちこちで続く。
東京大島町(亀戸)では様々な流言飛語が飛び交っている。
刑事らしき男が「朝鮮人や主義者があちこちで火を付けたり、井戸に毒をと」触れ回っている。
町民は「朝鮮人が襲ってくるかも、自警団作って見守りなど」不安をつのらせる。
◇野田村でも「朝鮮人数百人が襲ってきた、毒を井戸に、火付け」など噂が飛び交っている。
村長の龍一が「見たのか?」と聞くが、「みんなそう言っている」と。
野田村役場では在郷軍人長谷川が「朝鮮人が暴れているのは大勢いる、今すぐ自警団を」と急き立てる。
村長は押しとどめるが、内務省の通達が来て長谷川らは自警団を組織する。
◇行商団一行は村を離れようとして、団長の新助が渡し船の倉蔵に交渉に行くが、15人を二度で乗せろと言う新助と無理と言う倉蔵が言い合いになる。
二人のやり取りを茂次は讃岐弁の新助に「お前は朝鮮人か」と聞き、否定して行商人鑑札を出そうとする新助を「ピストルを出す」と思い、
村人に危険を知らせる半鐘を打ち鳴らす。
◇行商団を取り囲む村人たち。
手にはそれぞれ武器を持っている。
村長の龍一は必死に「讃岐から来た行商人」と云うが、長谷川らは認めず「15円50銭と云え」「天皇陛下万歳と云え」など強制して、言わないと「殺す!」と。
声が小さいと更に脅し付けて、歴代の天皇の名も言わせる。
それらに応えてはいるが、長谷川は納得しない。
何も言わず冷ややかに状況をみている新助に「お前はやはり朝鮮人だ」と決めつけ、村人の「やっちまえ!」の声が大きくなる。
◇そんな中、智一と静子は一行が朝鮮人ではないと必死に村人に訴えかける。
しかし二人は村人や長谷川に「お前も朝鮮人か」とか「朝鮮人を何で庇う」など言われる。
咲江は「みんなどうかしている」と言い倉蔵も、静子も行商団も日本人だ。
「日本人が日本人を殺すことになる」と騒動を収めようとする。
それまで黙っていた団長の新助が「鮮人なら殺していいのか!朝鮮人なら殺していいのか!」と。
◇その後ろに子どもを背負ったトミが無言で近づき、新助の頭に鳶口を突き刺し新助は倒れ落ちる。
かけよる妻や子どもを茂次や正吾は竹槍で刺し、逃げ惑う行商人に村人が殺到し、長谷川は軍刀を抜き追いかけて殺害する。
逃げ惑う行商人たちを何処までも追いかける村人や在郷軍人らはもはや人でなく良心の欠けらもない。
殺された9人は利根川に流された。
◇捕らえられた6人は浄土真宗のお経を唱え、水平社宣言も唱えていく。
茫然と村人が立ちすくむ中、野田署の警官が到着し「この人達は間違いなく日本人だ」「まさか・・・」と。
そして、「これ以上の殺戮はダメだ」
長谷川は「今更何を言う!」「自警団を作って対処は警察やお上が言ったじゃないか!」と・・・。
静子と智一は、6人が縛られていた針金を解き始める。
帰ってこない夫を「鮮人に殺された」と思い込んでいたトミだったが、夫は村に帰ってきた。
「何かあったのか?」と聞く夫にトミは茫然と無言で立ち尽くす。
◇映画はこんな場面も。
千葉日々新聞の女性記者の楓が、強盗や殺人事件などは「朝鮮は人か社会主義者」の仕業と必ず書くことを部長に命じられ拒否する場面。
しかし、9月4日の千葉日々新聞には、「野獣のごとき鮮人暴動、魔手帝都から地方へ」など書かれ怒りに震える楓が・・・。
(続く)
<デラシネ>