例によって若い教員の話に耳を傾ける。
隣にいる二回り程先輩の教員に対して、「僕が校長になったら、先輩のことを後補充にとってあげますよ・・・」なんて喋っている。
半分は冗談だろうが、彼は何かと校長という言葉を口に出す。
私と出会って間もない頃、「どうして○○先生は校長にならなかったのですか?」と尋ねてきたことがあった。
「うん、能力がなかったからかな・・・。」
「そんなはずないですよ! 話聞いてただけで分かりますよ。」
「そうかい。じゃあ、魅力なかった・・・てことかもな。」
「どうして魅力なかったのですか? 校長になれば、先生のお考えが全校で実施できるんですよ。」
「いや、そうじゃないよ。みんなが私に賛成してついて来てくれなきゃできないよ。」
「絶対みんなついて行きますよ。第一、先生と論議して勝てる奴ってそういないっすよ。」
何と私を過大評価している若者か・・・・・。
その時は、こいつはすぐ組合だなと思ったが、そうはいかなかった。
何かにつけて校長室に一人で入って行くのである。
自分の授業についてどうだったか、次にこんなことをしたいがやってもいいか、良い方法があったら教えてください等々、何でも校長に意見を求めるのである。
だから、校長に認知されないことは絶対しない。
良く言えば物怖じすることなく積極的に自分の意見を校長に言う。
しかし、逆に言えば校長の言うがままに、あるいは校長の考えを先取りして行動するパターンが出来上がっていった。
それにしても私の話をよく聞き、授業実践も私と共に研究し私の方法論を真似ようとする。
数多い若者の中にあって、彼の行動力というか私への接近度は群を抜いて高い。
要するに、彼は私を校長同様に一目置いているのであろう。
彼の価値観として、権力を持ってして当たれば事は容易に運ぶ・・・というようなものがあるのかもしれない。
彼は、職場の同僚を本質的に評価していない。
彼の発想からすると、ほとんどみんなダメなのだ。
例えば、子どもに振り回されている。
まとめる力がない。
リーダーシップがとれない。
発想が貧困。
センスがない。
力がないくせに威張ってる。
etc
たまたま私の発想やセンスが彼の心に響くものがあったのだろう。
だから、校長になってリーダーシップを発揮して理想の学校を作れたはずなのに、何故そうしなかったのかというわけだ。
ある時、私はズバリ言った。
「校長が学校を変えるのも可能かも知れない。しかし、そこの職員がみんな同じ発想になるなんてありかな?」
「なったら、素晴らしいじゃないですか!」
「いや、色んな人間がいて、色んな考えがあってこそ面白いんじゃないかな。」
「けっこう面倒ですよ。」
「そこが面白いんだよ。心底みんなで論議して、一定の結論を導き出すんだ。共通理解という言葉で表現される一定のコンセンサスを獲得するんだよ。」
「そんなの校長になってもできますよ。」
「たしかにそうかもしれない。しかし、一教員として平場でリーダーシップを発揮したほうが楽しいよ。それに、校長は教育委員会とか色々な所からのシバリがあるから大したことはできないよ。その点、組合ならある局面では教育委員会と対抗して実践することだって可能だよ。もちろん校長も巻き込んだり納得させたりしながらね。」
本当は、もっと組合の効用を話しても良いのだが、今のところはこんな感じだ。
ところで、最近の彼は、前述したように話の上では「組合系」より「校長系」を念頭におくようになっている。
前者は容易でないことを悟ってしまったのか、後者の方に魅力を持ってしまったのか、私とのその種の会話は一旦停止している。
しかし、今までの彼の動きからすると、職場の中で協調しながらコツコツと積み上げていくような仕事ぶりではない。
やっぱり校長を目指した方が楽なのかもしれない。
少なくとも彼は理想を持ってこの職に就いているようだ。
そして、将来に向けた夢もあるにちがいない。
だとするならば、あまりにチッポケな夢ではないか。
私は、彼の動向をこれからも注目したい。
<やったるで>
隣にいる二回り程先輩の教員に対して、「僕が校長になったら、先輩のことを後補充にとってあげますよ・・・」なんて喋っている。
半分は冗談だろうが、彼は何かと校長という言葉を口に出す。
私と出会って間もない頃、「どうして○○先生は校長にならなかったのですか?」と尋ねてきたことがあった。
「うん、能力がなかったからかな・・・。」
「そんなはずないですよ! 話聞いてただけで分かりますよ。」
「そうかい。じゃあ、魅力なかった・・・てことかもな。」
「どうして魅力なかったのですか? 校長になれば、先生のお考えが全校で実施できるんですよ。」
「いや、そうじゃないよ。みんなが私に賛成してついて来てくれなきゃできないよ。」
「絶対みんなついて行きますよ。第一、先生と論議して勝てる奴ってそういないっすよ。」
何と私を過大評価している若者か・・・・・。
その時は、こいつはすぐ組合だなと思ったが、そうはいかなかった。
何かにつけて校長室に一人で入って行くのである。
自分の授業についてどうだったか、次にこんなことをしたいがやってもいいか、良い方法があったら教えてください等々、何でも校長に意見を求めるのである。
だから、校長に認知されないことは絶対しない。
良く言えば物怖じすることなく積極的に自分の意見を校長に言う。
しかし、逆に言えば校長の言うがままに、あるいは校長の考えを先取りして行動するパターンが出来上がっていった。
それにしても私の話をよく聞き、授業実践も私と共に研究し私の方法論を真似ようとする。
数多い若者の中にあって、彼の行動力というか私への接近度は群を抜いて高い。
要するに、彼は私を校長同様に一目置いているのであろう。
彼の価値観として、権力を持ってして当たれば事は容易に運ぶ・・・というようなものがあるのかもしれない。
彼は、職場の同僚を本質的に評価していない。
彼の発想からすると、ほとんどみんなダメなのだ。
例えば、子どもに振り回されている。
まとめる力がない。
リーダーシップがとれない。
発想が貧困。
センスがない。
力がないくせに威張ってる。
etc
たまたま私の発想やセンスが彼の心に響くものがあったのだろう。
だから、校長になってリーダーシップを発揮して理想の学校を作れたはずなのに、何故そうしなかったのかというわけだ。
ある時、私はズバリ言った。
「校長が学校を変えるのも可能かも知れない。しかし、そこの職員がみんな同じ発想になるなんてありかな?」
「なったら、素晴らしいじゃないですか!」
「いや、色んな人間がいて、色んな考えがあってこそ面白いんじゃないかな。」
「けっこう面倒ですよ。」
「そこが面白いんだよ。心底みんなで論議して、一定の結論を導き出すんだ。共通理解という言葉で表現される一定のコンセンサスを獲得するんだよ。」
「そんなの校長になってもできますよ。」
「たしかにそうかもしれない。しかし、一教員として平場でリーダーシップを発揮したほうが楽しいよ。それに、校長は教育委員会とか色々な所からのシバリがあるから大したことはできないよ。その点、組合ならある局面では教育委員会と対抗して実践することだって可能だよ。もちろん校長も巻き込んだり納得させたりしながらね。」
本当は、もっと組合の効用を話しても良いのだが、今のところはこんな感じだ。
ところで、最近の彼は、前述したように話の上では「組合系」より「校長系」を念頭におくようになっている。
前者は容易でないことを悟ってしまったのか、後者の方に魅力を持ってしまったのか、私とのその種の会話は一旦停止している。
しかし、今までの彼の動きからすると、職場の中で協調しながらコツコツと積み上げていくような仕事ぶりではない。
やっぱり校長を目指した方が楽なのかもしれない。
少なくとも彼は理想を持ってこの職に就いているようだ。
そして、将来に向けた夢もあるにちがいない。
だとするならば、あまりにチッポケな夢ではないか。
私は、彼の動向をこれからも注目したい。
<やったるで>