定年退職まであと数年の友人がいる。
彼は、熱心な平教員でありかつ真面目な組合員でもある。

最近、彼の口から「早くこの職をやめたい」という言葉をよく聞くようになった。
同じ道を歩んできた者として、この気持ちは実によくわかる。

若い時ならまだしも、定年まじかになって子どもたちのトラブルや親の苦情等に対応するのはかなり疲れる。
それだけなら仕事上のことだからと諦めもするが、圧倒的に増加した若い同僚即ち非組合員の中での仕事はより一層の疲労感が伴うにちがいない。

管理職の思いを先取りするかのような若者の言動は、年配者からするとイライラさせられる。
彼らは自己防衛策としての従順さを示しているのだろうが、ただ威張りたいだけ或いはこれが信念だとばかり命令する馬鹿な管理職に素直に従う姿は自分が若い頃とはまるで異なる。

だから友人には言いたい。
「若い連中の手本になるような組合活動を校内でしてみたら・・・」と。
たしかに一人分会では、かつてのような圧力は容易にかけられないかもしれないが、一人でもできることはけっこうある。

例えば、条例に基いた勤務時間を遵守させることだ。

組合員「勤務時間前の登校指導を日直業務としてやるわけですね。」
校長「子どもたちのためにできればお願いしたい。」
組「重要なことならきちんと仕事として位置づけましょう。お願いなんて曖昧かつ情緒的なもので教育はできないでしょう!」
組「あくまでもお願いなら、やらなくてもいいわけですよね。」
長「では、仕事としてやってください。」
組「では、時間外勤務を認める限定4項目には該当しない勤務時間前の仕事ですから、これに従事した際は個別に勤務時間を運用してくださいね。」
長「ということは・・・?」
組「いいですか、本来なら校長はこのような勤務時間外の仕事は命じられないのですよ。」
組「それでも重要な仕事として職員に従事してもらいたいなら、条例に基いて休憩時間をその日のうちに取得しなければなりませんから、朝の15分間勤務は退勤前の15分勤務と相殺になりますね。」
長「つまり・・・」
組「そうです、3時45分に退勤ということになります。」
長「それでは困ります。」
組「それなら、条例に違反するような指示は職員に出さないでくださいね。いいですね。」
長「・・・・・」
組「ちなみに、勤務時間を定めた条例を遵守しない管理職は処分対象になることもおわかりですよね・・・・」

このようなやりとりは、普段は教職員の服務に関して口うるさく話す管理職にしてみれば「灯台下暗し」かもしれない。
私の体験からは、たいていの校長は「運用」という形で早帰りを認めてきた。
仮に実現できなくても、若い職員にあるべき姿を示すことになるのである。
これは、非常に大きな教育として彼らの心に残るに違いない。

退職を数年後に控えた組合員なら、もう何も怖いものなぞいないのだ。
まして若い管理職が増えている今日、彼らに対してもきっちり当たり前のことを教えておくことも大切なことかもしれない。
いずれにしても、「やめたい!」と思うなら、やめる前にやるべきことをやってからやめた方が後味が良い。



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