
一昨年の秋に自宅の庭を直した。
古くなった芝を剥して、新しく張り替えた。育ちすぎた木々も切り倒して、土も掘り返したり入れ替えたりした。
野菜を作る畑も少し確保した。
住み始めたとき、花桃の木を二本買って植えた。
赤と白の八重咲きである。
春を告げる見栄えの良い花だった。
しかし20年以上も経ち大きくなり過ぎたので、二本とも切り倒すことにした。
代わりの木が、赤と白で育っていたからだ。
これは落ちた種から育てたものである。
昨年春に庭のあちこちから、10本以上もの花桃の芽がでてきた。
掘り起こして鉢に植え替えたりして育てていた。
ところが、今年になってまた、あちこちから花桃の種から芽が吹き出してきた。
困った。
桃は3年で花が咲くので、全部育つと花桃のジャングルになってしまう。
かといって、そのまま抜き取って、花桃の命を奪うのも可哀そうすぎる。
まだ小さいのでそのままにしてあるが・・・。
なぜ今頃たくさん芽吹いたのだろうか。
切り倒した花桃の木の下は、雑草に覆われていた。
毎年花が咲き実もなり種ができて、雑草の上に落ちたまま時間が経っていたと思われる。
植物の種は、環境の条件が適さないと、いつまでも休眠して発芽の到来を待つという。
土中深く何年も何十年も眠り続けるという。
庭を直したとき土を掘り返したので、種があちこちに移動しただけでなく、発芽するに条件の良い環境下に置かれることになった。
今がチャンスとばかりに、次々と芽を出したと思われる。
今年芽吹いたのは、いったいいつ種になったものだろうかと思う。
ところで、大賀ハスやツタンカーメンのエンドウ豆のことを知っている方は多いと思う。
大賀ハスは、1951年に千葉の検見川遺跡から発見された古代ハスの実で、発見した大賀一郎博士が発芽・開花させることに成功したものである。
このハスの実は2000年前のものと言われる。
ツタンカーメンのエンドウ豆は、1922年に英国の考古学者ハワード・カーターがツタンカーメン王の墓を発見し、その墓の副葬品の中から発見された。
それをカーターが発芽・栽培に成功した。
日本には1956年米国から送られ、栽培が広がったという。
ツタンカーメン王は紀元前14世紀ころ言われているので、カーターの発芽させたエンドウ豆は3400年前のものということになる。
このエンドウ豆は、私も持っており毎年育てて人に上げている。
薄紫のキレイな花を咲かせ、サヤも紫である。
ご飯に炊き込み食べることも出来る。
少し時間が経つと、赤飯のように色が変わる。
古代エジプト人も食べていたと思うと不思議な感覚になる。
そのことは、ともかくハスにしてもえんどう豆にしても、動物では考えられないほどの驚異的な生命力である。動物は寿命を操作することは殆んどできないが、植物は種子の中に生命の源と遺伝子を残していく。
しかも、条件が整った時だけ発芽するのだ。
凄いとしか言い様がない。
地中にまだ埋まっている我が家の花桃も、2000年たっても発芽してくれるだろうか。

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