放し飼い状態のニワトリは50羽程いたが、卵を産んでいるところを何度か見た。
産みたての卵を、カラに穴をあけて生のまま飲んだりもした。

ニワトリはカラを作るため、ビンや茶碗のカケラなど飲み込んでいた。
それが体の中で溶かされ、角が取れて丸みをおびた半透明の状態で地面に落ちている。
それを洗っておはじきにして遊んだりした。
 
ニワトリは卵のカラを強くしないと、カラなしの卵を産んでしまう。
貝殻の細かく潰したものが農協で販売されていて、それをバラ蒔いて食べさせていた。
ニワトリは争うようにして、啄んでいた。

放し飼いでなんでも啄んでいたので、ミミズなども食べており黄身は朱色をしていた。
東京に来て黄身が黄色なので、美味しそうに感じなかった。
 
卵の産まなくなったニワトリは、肉にして食べていた。
中学生の頃父親に命ぜられ、ニワトリを潰せと言われて、三度ほどやったことがある。
(潰す=鳥を食べるために殺すこと)

父も病気で寝ており嫌な仕事だが、仕方ないと思い実行した。
垂木にニワトリの首を乗せて、ナタを一気に振り下ろしたら、2~3m首なしのまま走りバタッと倒れた。
家畜の命を奪う初めてのことだったので、本当にびっくりした。

足を持って血抜きをしたあと、逆毛にしてお湯をかけ羽の毛をむしり取ります。
それが済んだら解体です。
解体の順序は省きますが、砂肝とか産み落とされていない黄身とか、もも肉や胸肉とか手羽などに分けることもしました。
ニワトリの脂身は黄色で、とても綺麗です。白くないのです。

今ではそんなことをして食する人は、殆んどいませんが生きることの原点だった様に思います。

二度目の時は、首のないまま3mほど飛んでばたりと落ちました。
やはり、ショッキングな事で驚きました。
まだ、こんなにも生きる力があったのかと・・・。

今は大量生産で、20年くらい前ブロイラーの生産工場のテレビを見ました。
エサをこぼすので、くちばしを平に切られていました。
鶏の足首を機械がつかみ、逆さにされた状態で首が次々にきり落とされていました。
羽も機械でむしり取られ、最後は丸裸状態のまま出て来るのです。

屠殺ということに出会う、体験することは今では無いでしょう。

良いことか悪いことか、一概に言えませんが生きるということは、「他の生き物の命を奪って自分が生きる」ということを知るには、こんな話も必要と思い教えたこども達に話してきました。



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