羊は5頭いて春になると毛を刈り取って紡績工場に出荷していた。

秋になると毛糸になって戻ってきた。
母はその毛糸で、兄弟五人のセーターを二本の毛糸針で編んでくれた。

羊は産まれた時、長いしっぽがある。
なぜかしっぽは邪魔になるというので、産まれてしばらく経ったとき、鉄の焼きゴテで切り落としてしまうのである。
それは父の役目で見ていて、子羊の鳴き声と毛の焦げる匂いで怖かった。

牡の羊はオスのままだと、危険ということなのか、羊毛を取ることが目的なので去勢していた。
ある程度大きくなった牡の子羊を村の誰かの家に集めて、獣医がきて去勢手術をするのである。

それを子ども達が見ているのである。
子どもの私も見ていたが羊のタマは長細く、獣医はそれを大きい順にずらりと並べて、誰々の家の羊のタマは大きいなど言って、見ている私たちを楽しませてくれた。   

馬の去勢手術も見たこともあるが、こちらはソフトボール大の丸いタマが地面に転がり落ちたので驚いて逃げ出した。

牛の出産も友達2~3人と登校途中見ていて、遅刻したこともあった。
でも、周りの親たちは、生活の為に必要な知識と思われたのかどうか分からないが、早く学校に行けとも叱られもしなかった。
ただ、馬の種付け=交尾の準備中に出くわしたことがあったが、それは「帰れ!」と言われたので見ることは出来なかった。
 
田舎の山奥の生活だったが、それなりに楽しみは日々あったと思う。


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