2002年4月24日に一級建築士事務所登録申請書を兵庫県へ提出した。5月21日に「一級建築士事務所登録済証」が、下付された。すぐに、大阪の不動産会社へ電話をして、仕事の打合せの日取りを決めた。大阪へ行くその朝、妻に「今日は、WING建築設計事務所の初仕事や。ええ話になるように行ってくるわな」と言って自宅を出た。
不動産会社へ着いて建築部長を紹介されるが、打合せは社長とだけでおこなった。仕事は、建築確認申請代理<注7>業務である。僕は、「申請書を作るのに御社の設計者とか工事監理者の建築士資格・登録番号を、それから大阪府へ登録をしている建築士事務所名・登録番号などを教えてください。」と言った。すると社長は「登録はしていない。そんな資格を持った社員はおらへん。市成さんの名前を書くんや。」と答えた。この会社は、お客様と打合せをして設計をしていると聞いていた。ということは設計業務委託契約をお客様と結ばないで、営業マンが土地や家を売るために、お客様の希望を鵜呑みにしてフリーハンドの間取り図を作っていることになる。業として他人のために設計をおこなうには、
大阪府に建築士事務所登録申請書を出して「○級建築士事務所登録済証」を貰わないといけない。しかし、その登録をしないで設計業務をしているのは、あきらかに違法行為である。違法行為が堂々と日常業務でおこなわれている会社の仕事をこれからしていくのかと思うと、不安でいっぱいになった。社長へ「僕の仕事は、代願だけなので、設計も工事監理も実際におこないません。それなのに、申請書へ僕の名前を載せることは、建築士の名義貸しになります。それは、建築士法違反になります」と言った。しかし、「君は、ケツが青いなぁ。建築士は、君だけやない。載せたくないのなら、他の建築士にさせる。やるのか、やらないのか、どうするんや」と、切り返えされてしまった。
2005年の秋、姉歯元建築士がマスメディアで騒がれたのは皆さんもご存知だろう。姉歯元建築士は国会で「仕事をもらった会社からできないのなら他の構造事務所にさせると言われた・・・」と証言していた。それを聞いた時に「他の建築士にさせる」というこの時の社長の言葉を思い出した。建築・不動産業界は、こうした悪しき慣習にドップリ染まっているのだ。
~続く~
<注7> 建築確認申請代理
建築士は建築主の委任を受け、申請の代理者となって申請手続をすることができる。
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