ゆとり大学5年生 -2ページ目

ゆとり大学5年生

自分探しという名の現実逃避

「はい、いらっしゃいませ。ご予約の方ですか?」


電話と同じ声でしゃべるこの男が三宅らしい。

案内されたまま部屋に入るとそこは長机が6つ置かれた小教室で先客が4人いた。

同年代の若い男に、中年の男女。

それぞれ違う椅子に座っていることからして特に知り合いというわけではなさそうだ。


互いにしゃべることもなく時間が過ぎ、三宅が前に出てしゃべりだす。


「皆さん、はじめまして。私がビジネスサバイバル塾の講師を務める三宅です。よろしくお願いします。

さて、突然ですが皆さんは今の生活に満足されていますか?いないですよね。だからここに来ている。

そして、その打開策が見つからなくてここにいる。そうですよね。」


「しかしこの思いを抱えている方はあなたがただけではなく、世の中にそれこそゴマンといます。そして何もせずに時が流れるまま生きている。そうした人に比べて今ここにいるあなた方は既にある一点において優れています。なんだかわかりますか?そう、危機感です。」


ここまで聞いて、うさんくさい場所に来てしまったという危機感が働きだした僕ではあったが周りの表情を見ていると、いちいちうんうんと頷く同年代の男、疑っているかのような顔をしている中年の男、何故か目を輝かしている女性と三者三様で面白い。


こんな場所でなければ誰一人して会うこともないんだろうな、等と考えているうちに三宅という男はまた突拍子も無いことを言いだした。



「さてこの塾では答えをあらかじめ提示するような講義は行いません。多種多様な業種や考えた方が混在する世の中では正解は無数にあります。私はこの集まっている4人で4通りの答えをそれぞれ皆さんに見つけてもらいたい。私が皆さんに出す課題は一つだけ。4人でグループでも個人でもいいです。個人もしくはグループで事業を行い、黒字を出すことです。」



今振り返るとこれだけは確実に言える。

あの瞬間から僕の社会人生活が本当の意味でスタートを切ったのだと。