とりあえず私はBOXティッシュとそこに乗っているパスタ星人を室内へ運んだ。するとそれはテーブルの上にぴょんと飛び降り話し始めた。
「きみはドアを開けてしまった。ぼくと一緒に旅をしようじゃないか。」
ドアドアドア。またドアだ。「私」と言い、このパスタ星人と言い、いったい何のドアの事を言っているのだろう。それに旅って。意味が分からない。それより何よりこれはいったい何者なんだ。分からないこと尽くしで腹立たしかったが、それでもドア以外の言葉が出てきたことで話が進んだと安堵にもにた気持ちが芽生えたのも確かだった。
そんな事を考えているとパスタ星人は私の頭を覗いたかのように喋りだした。
「君が考えている通り僕はパスタ星人だ。」
どうやら彼の話によると彼は私が思ったとおりの姿に形を変えるらしい。私がみかん星人だと思えばみかん星人だしティッシュ星人だと思えばティッシュ星人なのだ。そして彼は今、本当にパスタ星人だった。パスタ星人は咳払いを一つして続けた。
「君はドアをあけてしまった。もう後戻りは出来ない。僕と一緒に旅にでるのだ。」
そう言うとぴょんと私の肩に飛び乗った。パスタ星人には抜群の跳躍力が備えられている。これも私の思ったままの設定だった。
そうして私は彼に導かれるまま旅に出ることになったのだ。
壁に挟まれた細い道を、パスタ星人に言われるまま歩いていく。足元にはどろどろとした泥があり思うように進めなかった。何度も何度も転びそうになりながら一歩一歩慎重に足を運んでいく。私はパスタ星人の言いなりになった事を後悔した。今からでも遅くはない引き返そう、と。それ程に酷い道だった。どんなに歩いても、歩いても歩いても、一向に目的地にたどり着く気配はない。途中、パスタ星人が落ちたりしないかと気になったが、全くそんな心配はいらななかった。まるで私がもがいているのを楽しんでいるかのように上機嫌で鼻歌を歌っていた。どの位歩いただろうか。とつじょ頭上に巨大な影が現れた。よく見てみるとそれは私の指だった。彼は言う。
「君がハシゴだと思えばハシゴだし、パスタだと思えばパスタだ。だけど君は今、自分の指だと思った。だからあれは君の指なのだ。さて、君はどうする。」
分かったような分からないような。パスタ星人が現れてからずっとこの調子なのだ。私はふと足を止めた。それならば。私はその場で目をつぶり、ここは長い廊下なのだと思ってみた。
「御名答。」
パスタ星人は一言そう言った。何が御名答なのだろう。ゆっくり目を開けてみると、そこは長い廊下になっていたのだ。恐る恐る足を進めると、それは確かに廊下だった。さっきのように泥で足を取られることもない。私はするすると歩き出した。
「これからどこに行くの。」
「さぁ。君はどこに行くべきなのか。」
パスタ星人の言葉は不親切だった。だけども、もしかしたら私の行きたい所へ行けるのかもしれない。そう思い目をつぶった。そして私の行きたい場所、広い森を想像した。なんで森なんだと思われるかもしれないが、まっさきに森が浮かんだのだから仕方がない。けれども目を開けてみるとそこは廊下のままだった。












