うちらのじだい -9ページ目

第32話 悲しい帰り道

タカの事は嫌いじゃない、どちらかといえば好きな方。


けれど蓮への好きな気持ちが邪魔をしてタカは恋愛対象として見れていないのではないかと思う。


そんな状態でタカと付き合うなんて苦しくてたまらない。


でもここで付き合わなければ…というか付き合ってる事にしないと、蓮と望美に怪しまれる。


そこで色々もめるのだけはどうしても避けたい。

友達の彼氏を好きなんて事がバレたら、周りを裏切ることになってしまうから。

そうかといって蓮と望美がいちゃいちゃしてるのなんてみたくない。


複雑な思いを抱えたまま、私は悩んでいた。




そして五時間目の社会の授業が始まり、ただ先生がチョークで書くカラフルな黒板の文字をノートに写すとやる事がなくなり、窓際の席の私はぼんやりと校庭を眺める。




すると机の上に綺麗にハートに折った手紙が後ろから降ってきた。
振り返ると望美が何か目でうったえてくる。


そうした行動で望美からだと気付くと、丁寧に手紙を広げた。




『~Dearゆうな~タカ君と何話してきたのかな?もしかして、もうダブルデートの約束しちゃったりしててね(^ε^)♪しかし授業退屈だね。もう頭の中蓮君でいっぱいかもぉ!やばいかなり好き!!あっのろけちゃった、ごめんね?今日蓮君と一緒に帰るんだけどゆうな付いてきてくれる?2人だけだと恥ずかしいし…じゃあ放課後ね!Fromのぞみ』




とりあえず望美をチラッと見て笑った。


この時私が進む道は決まったと思う。








ただひたすら自分に嘘をつく道を…。








放課後になった。
今私たちは何故か3人並んで歩いている、しかも全員無言のまま。


こんな事になるんだったら断れば良かった。


私は話を盛り上げようと口を開いた。




ゆうな「あのさ~今度4人で動物園行こうよ!!私パンダ見たい!!」




望美「あ~いいねぇ!!私ライオン見たい。蓮君は何が見たい?」




蓮「…俺いいよ、動物とか興味ないし…てかゆうなはタカと2人で行けば良いじゃん。きっとそっちの方が楽しいぜ?」




ゆうな「…………そうだね、2人で行くわ。」




それだけ会話を交わすとまた無言になり、気まずい時間が流れた。
家に早く着きたいがために、自然に早足になる。

もうすぐ自宅に着くと言う時だった。




蓮「あっゆうな?」




ゆうな「ん?どした?」



蓮「タカの事よろしくな…」



ゆうな「分かってるよ」



それだけ言って無理矢理笑顔を作ると私は急いで自分の部屋に入り、ベッドに横になった。




「もう蓮とは終わったんだ…もう戻れない。」




そう思うと一気に現実が見えてしまったようでショックを隠せなかった。




蓮にただ『好き』と言えなかった。




たった一言なのに…。









前に進むために明日タカと仲直りをしようと思った。







外は雪も溶け、暖かい風が今年初めて吹き始めた優しすぎる陽気だった。






もう卒業式が近いことを知らせているように…。

第31話 一つの道

ゆうな「あのさぁ~教室の事はいいんだけど、もしかしてさぁ蓮君とか望美とかに…その…私たち…」




タカ「言ったよ!!付き合いたいって。ゆうなの事が好きだって。」




タカは私の声を遮るように、まるでそれ以上言わないでというような感じで言った。




ゆうな「いや…そうじゃなくて…もう付き合ってるって…」




タカに負けないように私も話しを原点に戻そうとし、真実を聞き出そうとする。


けれどやっぱり途中で遮られてしまう。




タカ「やったぁ!!ありがと!!まじうれしいなぁ~そうやって言って良いの?」




タカは嬉しそうにガッツポーズした、でも私の言いたいことはそう言った事ではない。もう心を鬼にしてはっきり言った。




ゆうな「違う違う!!そういう噂が回ってる見たいなんだけど。望美がタカ君から聞いたってさ。どう言う事?」




タカ「…………………」




ゆうな「………………」」









しばらく黙った後、やっとタカは白状した。




タカ「………だっていずれそうなるでしょ?」




そう、やっぱりタカだった。




今一番信じていたタカだった。





望美だって蓮だって勘違いするに決まっている、蓮の事が好きなのに…。

でももう蓮は望美という彼女がいる。


友達の彼氏を取る趣味はないし、いくら好きでもその理性が負けることは私は絶対にない。


男より友情を取るとかそんな綺麗な物じゃなく、人間として嫌だから。


でもそれが望美じゃなくて知らない女の人なら分からないかもしれないと思った。


せめて蓮の彼女が望美じゃなかったら…。


望美の彼氏が蓮じゃなかったら…。


そんな事を思っても全部遅かった。


あの時学校に行っていれば、美代と喧嘩しなければ…。


いくら後悔しても後悔しきれない。




ゆうな「ひどいよ!!まだそんな事一言も言ってないし…」




涙が出そうなのを歯を噛みしめてこらえる、タカが憎い。




今まで笑っていたタカの表情が一気に変わり、何とも言えないような優しいような寂しいような顔になる。




タカ「……やっぱ蓮の事そんなに気になる??」




そこで好きだと言ってしまえばこんなに楽なことはない、けどそこで好きだと言えば蓮も望美も、そしてタカも傷つける事になると思った。




ゆうな「それは………」




言葉を濁らせた、何て言って良いか分からない。




タカ「友達の彼氏取る気?」




タカの鋭い言葉が胸に突き刺さる、まるで蓮の事を好きと言わせてくれないかのような言い方をする。




ゆうな「取らない!!しかも蓮君の事好きじゃないよ!!」




また嘘をついた。




タカ「じゃあ俺だけ考えてれば良いじゃん。」




ゆうな「…………」




タカ「俺じゃ嫌なの??」




ゆうな「もう知らない…」








体育館を飛び出した、飛び出したって何も解決しないのに。


ただこれ以上タカといると、蓮の事を好きだと言ってしまいそうで怖かった。











道は二つある。



一つ目の道は、みんなに正直に蓮が好きだと自分の気持ちを話す。そうなるとタカと望美を傷付けて、タカと蓮の友情にヒビを入れることになる。


二つ目の道はただ自分に嘘を付いてタカと付き合う。










私はどちらか一つの道を歩くことになる。

第30話 望美との会話

ゆうな「蓮の事でしょ?朋美から聞いたよ!」




望美「…そうなんだけど…私見ちゃったんだぁ…映画館のトイレでゆうなと蓮君が抱き合ってるとこ…」




ゆうな「え?そうなの?でも蓮君とはなんでもないから!」




はっきり言って望美にそう言うのが精一杯だった、蓮が好きだからとか蓮がプレゼントくれたとか、とてもじゃないけれど言えなかった。


望美も傷つくだろうし、蓮も今望美と付き合ってる以上私に変なことを暴露されると困るだろう…。


私は無理矢理笑顔を作って嘘をついた。




望美「良かったぁ~!!私それ見たらゆうなと蓮君が付き合ってる物だと思ってたんだぁ!!気になってタカ君に相談したらゆうなは俺と付き合ってるから蓮とは関係ないって言ってたの本当だったんだぁ。」











えええええええええええ?!!!!!!!!!!










はぁぁぁぁぁぁぁあぃ?!!!!!!!!!!!!!











耳を疑った、いつから私とタカは付き合ってるのだろう?


タカはどうしてそんな事言ったのだろう…。
一回嘘を付くと、その嘘をかばうためにまた嘘をつかなければいけなくなる。




ゆうな「…本当…だよ!」




望美「じゃあさ、今度はダブルデートできるね!楽しみだな(^▽^)」




ゆうな「うん…楽しみだね…そんな話ししてたらさぁ…ちょっと私タカと話がしたくなって来ちゃったな…体育館行ってくる!」




望美「え?ゆうな!ちょっと!!」




気が付いたら私は体育館に向かって歩いていた、タカが許せない!しかもまだ私は一言も返事していない。


タカが蓮と私の仲を引き裂いた原因だったなんて…。


だからあの時わざわざ私を呼び出して蓮に見せつけるようにしたのかもしれない、蓮と望美が付き合ったのもタカが仕組んだことなのかもしれない。


でももし違ったら…?ただタカは学校に来ていなくて元気がない私を勇気づけようとしてくれただけで、望美と蓮が付き合ったのも偶然かもしれない。


いいや、それとも美代が関わってきているのか…。望美が蓮の事を好きな事、けど蓮と私が抱き合ってた事を望美が美代に相談してたとしたら…。

私の事を嫌ってる美代が、良く思うはずがない。

私を苦しめる方向に持っていくのは美代の性格上有り得ることだ。




…考えれば考えるほどにこんがらがってしまい、すべてありえる。疑えば疑うほどキリがないくらいみんな怪しく思えてしまい、人を信用しようとしても何を信じたら良いのか分からない。






とりあえず体育館に付くと深呼吸し、バスケしている男の集団から楽しそうにしているタカを見つけた。




私はタカを呼び出した。






ゆうな「タカ君ちょっといいかな?」




タカ「おう…どした??教室ちゃんと入れたか??」