大きな何者かが、小さな人形で遊ぶみたいに、

私の肩口と足を両手で鷲掴みにして、容赦なく上下左右に揺さぶったような

あの朝から一夜が明けた。


死者は2,500人を超えた。

従兄弟が伝えるには、避難所は動物本能のままだ、という。


私は、すでに

ラジオ、懐中電灯、水、食料、毛布の調達、

そして風呂の水張りとガス漏れのチェックを済ませていた。

ガスが漏れていれば、換気扇のスイッチを入れただけで吹っ飛ぶ。


...当時を身体は、憶えている。


被災地と同じ関西でも、大阪や京都などは大きな被害は無かった

ように思う。余震が続いて不安がる家族を残して、

スーツに着替えて出勤するビジネスマン。

この一大事に、神戸の取引先に電話を掛けて被災状況を探る、

ただでさえ大事なライフラインを使って、自社の営業目的で

こんな馬鹿げたことをしている馬鹿な会社員も、居たようだ。


「わぁ、地震だぁ! と思って、おにぎり3個こしらえちゃった」

と話した知り合いの女性には参ったが、

会社の命令かなんか知らんが、

自分の価値観やモラルを持てずに、他人に言われたまま動く

不気味な会社人間より、よっぽど本能的で信用できる。


身体を失ったと言われる現代人、

頭脳ばかり理念ばかり数字ばかり..ではなく、

たまには、動物的に本能的に身体の声を聴かないと、

たいへんなことになりそうな、予感がします。