6月5日付日経新聞の夕刊に見つけた記事が参考になるので

後学のために以下に記載します。

 

 

~~~~~ 以下日経新聞6月5日夕刊よりコピペ ~~~~

高齢者食堂、「男性の孤立」映す
地域での交流にハードル

 

地域のシニアが集まって食事をともにする「高齢者食堂」が増えてきた。子どもに無料か低額の食事を提供して育ちを見守る「子ども食堂」のように、シニアの新たな居場所として注目が集まる。一緒に調理したり、誰かに作ってもらって食べたりと形態は様々だ。一方で男性の参加が少ない食堂があり、男性が地域でネットワークを築く難しさの一端も透けて見える。

「きょうはホタテやカキがあるんですよ」「ご飯のお代わりはいい?」

東京都文京区の住宅街の一角。NPO法人居場所コム(東京・文京)が運営する一軒家「こまじいのうち」で食事会が開かれていた。

月1回、地域のシニアが集まって昼食をとる。食卓にはスタッフが作ったサラダや鶏もも肉の梅酒煮などがずらりと並ぶ。参加費は無料で、この日は10人集まった。「出会いの場になるね」。一人暮らしの80代の男性はここでの会話に刺激を受けているという。

 

 

 

都は地域で高齢者らの交流を増やそうと2023年度、文京区など5自治体13食堂で高齢者食堂の補助を始めた。24年度は5自治体18食堂で支援する。認知度は少しずつ高まっているが、課題のひとつは男性参加者が少ない食堂が目立つことだ。

こまじいシニア食堂では「女性の参加者は男性の2倍くらいで、会話も積極的」。居場所コムのマネージャー、船崎俊子さんは説明する。高齢者食堂を支援する豊島区、荒川区の担当者も「男性の参加が少ない」と話す。

高齢者食堂の先駆けとしては、NPO法人メリリル(千葉県流山市)の「シニア食堂」が知られる。シニアが調理から後片付けまでを自らこなす。ここでもメンバー約60人のうち、男性は3分の1だ。

副代表の松沢花砂さんは「孤立しがちな男性は世話好きな女性ボランティアと同じグループにし、なじみやすくする工夫をしている」と話す。

社会老年学が専門の摂南大学の小池高史准教授は「高齢者の孤立を防ぐ活動をする地域の現場では、高齢男性の不参加という課題をよく聞く」と指摘する。

日本のシニア男性は友人の少なさで際立つ。内閣府が米国など4カ国で60歳以上の男女に聞いた調査では、「同性、異性の友人がいずれもいない」という回答が日本の男性は約4割と突出して高い。

孤独・孤立の事情に詳しい早稲田大学の石田光規教授は「今のシニア男性は猛烈に働き、地域との関わりを持たなかった人が多い。頼る人が配偶者のみとなりがちだ」と話す。

性別に対する規範的な考え方も影を落とす。小池准教授は「男性は周囲に助けてもらいながら生きるより、1人で自立して強く生きていくのが『男らしい』とされてきたことが大きい」とする。

本人が望んでいない場合、特段人との関わりや居場所を用意しなくてもいい、と受け取る向きもある。だが、石田教授は「医学研究では孤立は心身へのダメージが大きいことが分かっている。シニア男性が関わりを求めていなくても、あえてお膳立てする必要がある」と指摘する。

男性が「これなら参加してもいい」と思えるテーマ設定が大事だ。食事をともにする場に限らない。居場所コムでは「囲碁のイベントは男性の参加が多い」といい、男性だけで集まる場もハードルを下げそうだ。

世田谷区社会福祉協議会が支援する「おとこの台所」では退職した男性たちが月に数回、一緒に料理して食事をする。区内9カ所で活動しており、メンバーは200人超。「指揮命令はない。なにごとも手分けしてやる」をマナーに掲げ、入会時には「出身校や働いていた会社など個人的なことは話さなくていい」と伝える。

いわば「男性版高齢者食堂」だ。3年前から参加している70代の男性は「海外駐在していた、というような話題は会話に出てくるが、メンバーがどの会社で働いていたかはいまだに知らない」と笑う。フラットな関係性を保つことも交流のポイントとなっている。

 

女性にも深刻化のリスク

シニアの孤立は今後、女性でも深刻になる可能性がある。女性は子育てしながら地域の人間関係を築く例が多かったが、未婚・晩婚化で子どもを持たない女性が増えた。地域との関わりを持たないままシニアになれば、女性の孤立リスクも高まる。

子どもがいても同様だ。石田教授は「会社優先の男性に似た働き方を求められ、子育てしながら働く女性も地域との関係づくりが難しくなった」と説明する。

孤立・孤独問題は先進国で注目されている。2018年に英国が世界初の孤独担当相を置き、日本も24年4月に孤独・孤立対策推進法を施行した。年を取れば1人で生活することの難易度が上がる。石田教授は「シニアの日常生活につながりの網の目を張る必要がある」と指摘する。食事をともにする場のほか、ショッピングモールで相談コーナーを設けるなど、様々なアイデアが必要だ。

(天野由輝子)