2028年に利用開始予定で建設準備が進んでいる、深沢の鎌倉市新庁舎。
今の市庁舎(=現庁舎)は、その数年後を目指して改築される予定です。
8月27日(日)、現庁舎をどのようなものにしたいか語り合う
トークセッションに参加しました。
「鎌倉の新しい拠店 ”ふみくら”をともに創る 場をつくろう!場をはじめよう」
というお題目で、株式会社グランドレベル(▼)の代表である田中元子氏と、
建築家・デザイナーの長岡勉氏を招いて、比留間副市長も登壇するもので、
2時間にわたって有意義なお話をうかがうことができました。
田中さんは、全国で空間・施設・まちづくりのProduceを手掛けている方で、
東京のある(殺風景な)新興マンション街に、「私設公民館をつくろう」という
発想で「喫茶Laundry」を立ち上げ、ここに付近の住民が集まり、交流が進み
「自然発生的」にイベントなどが行われるようになった経緯を、説明されました。
私は、田中さんご自身がイベントを企画するのではなく、住民の人達が
やりたいことをわくわくしながらできように誘い、皆が考えていることを
「引きだす」というアプローチをとっていることが、ポイントだと感じました。
田中さんは、「独りコーヒー屋台」のようなものを出して、通りがかりの人に
「無料でコーヒー飲んで行かない?」と声をかける試みもされるそうです。
「1円でも、お金を取ると『取引』になってしまうので、人は長居しない。
でも『無料』にすると、『なんで無料なんですか?』という具合に会話が始まり、
話が発展し、思いがけない情報に接することができる」といいます。
これも、相手が考えていることを「引きだす」妙味を示しています。
そして、「大切なのは、”補助線”を引いてあげること。真っ新(まっさら)な
画用紙に『何を描いてもいいよ』と言われても、難しい。相手の発想を引き出す
には、補助線をうまく引いてあげることだ」といいます。
そんな話をしていると、長岡さんが加わって、ご自身がデザインした
あるショッピングモールの「空間(建物内インスタレーション)」について
語り出しました。
デザイナーや建築家は、期待に応えるべく、「すごいもの作ってやろう」
と意気込むけど、そのままで利用者が本当に喜ぶものって、意外と多くはない
そうです。むしろ、建築家たちが作ったものに、利用者たちが、ちょっとした
工夫や発想で手を加えると、魅力がアップすることもよくあるとか。
ここで、「合点」が行きました。
改築される現庁舎は、今は影も形もありません。市役所の計画では
中央図書館や鎌倉生涯学習センター(ホールやギャラリー)、窓口サービス機能、
喫茶コーナーなどが入るとのことですが、現在はまだ(上記で田中さんの言われている)
『真っ新な画用紙』の段階ではないでしょうか。
そう考えると、現庁舎を改築する際どういうものにしたいかを、現時点で
100%見極めることは無理があるでしょう。むしろ、利用が始まってから
(=上記で言う”補助線”が引けてから)、具体性に富んだ要望を引き出す
準備ができるのではないか、と私は考えました。
「市民と語る。共に考える」と銘打つイベントは多いですが、これらは
建物として完成し、使いだすときの状態に重点があるという印象です。
もちろん、現時点で語り合うことも、初期の施設を充実されるために必要
なので、それを否定するつもりは全くありません。
それに加え、敢えて「余白」を残しておくことも重要かと。つまり、建物が
完成して(補助線が用意できた状態)からも継続的に利用者の要望を引きす
場をつくり、その段階での発想を取り込んで、頻繁にバージョンアップ(進化)
していける。そんな思想の下、改築に取り組んでいただけたら、
面白いだろうな、と考えています。
例えば、スマホの基本ソフト(OS。Androidやi.OS) のように。
あるいは、テスラのEV(電気自動車)の基本ソフトAuto Pilot のように。
実際に利用され始めた後でも、利用を継続しながら頻繁にバージョンアップ
できれば、タイムリーに進化を続け、いつまでも古くなることがないでしょう。
新しい市役所も現庁舎も、こうした思想の下に、「進化し続ける市庁舎」を
目指していただきたいと考えさせてくれる、そんなトークセッションでした。
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東水会 自治会長
菅野 哲央

