夜更けの夜明け | 脚本家そごまさし(十川誠志)がゆく

脚本家そごまさし(十川誠志)がゆく

テレビアニメ、ドラマ、映画と何でも書くシナリオライターです。
24年7月テレビ東京系で放送開始の「FAIRYTAIL」新シーズンに脚本で参加しています。
みんな観てねー。

 

 昨年、同居女子が「今度はこれを作ってほしい」と珍しく私にリクエストしたのが、この模型である。先に作っていた物があったり仕事が忙しかったりで伸び伸びになっていたのだが、ここ数日中国の仕事が小休止したので(あちらの仕事は翻訳に時間がかかるので、監督からの修正フィードバックがこちらに届くまでに時々タイムラグができる)、ようやく作ってみた。

 フランスやイギリスを中心としたEUの合弁企業として数十年前に出発したエアバス社。現在は独立した民間企業に移行しているが、かつてボーイングの独占市場といってよかった旅客機業界で後発のエアバス社が飛躍的に伸び、今やボーイングをしのぐ勢いになった、その原動力がこの飛行機、エアバスA320-200である。

 映画「ハドソン川の奇跡」で、トム・ハンクス機長が操縦していたのもこの機だ。

 そして上の写真のピンクの可愛い機体は、日本初のLCC(Low Cost Carrier)=格安航空として2012年に就航したピーチ・アビエーションの機体である。女性の方ならおわかりかと思うが、「飾っておいたら可愛くてキレイそうだから」というのが、彼女のリクエストの理由だった。

 

 昨夜の12時くらいに完成した。

 すると、いつも付けっぱなしにしてあるNHKのBS1で、零時50分からアメリカの大統領就任式をLIVE中継するという。

「ちっちゃくてピンクでかわいいね-」

 と、模型を眺めながらしきりに喜んでいる同居女子と一緒に、就任式を見た。

 

 LIVEとまでは言わずとも、ニュースで見た方も多いだろうから詳細は書かないが、レディー・ガガの国歌斉唱が圧巻で、後は居並ぶ人々が全員ビシッとマスクをしているのが印象的だった。

 それにしても感慨深い。

 4年前、トランプ前大統領が就任した時も深夜にLIVEで見、そしてこのブログにも書いたのだが、あの時は「これからアメリカは一体どうなってしまうのか」という不安が先に立ち、まるで上の空で見ていた記憶がある。案の定というか何というか、あれから今日に至る4年間は混乱の連続で、前大統領が何かやらかす度に溜息をつく日々だった。

 とどめに新型ウイルスで世界一の犠牲者を出すという不名誉極まりない記録を打ち立て、国際的に見て支離滅裂な政策を連発してあちこちに迷惑をかけまくり、自国をバイデン新大統領の言う『深刻な分断』に陥れた老人は、就任式にも出ずにホワイトハウスを去っていった。欠席については様々な憶測がなされているが、私に言わせれば、単純に「まるでスネた子供」である。いや、そう言っては子供に失礼ではないか、とまで思うほどだ。

 

 日本人だから関係ないようなものの、私は10代の頃からずっとアメリカの党では民主党を支持している。

 だからという訳でもないのだが、昨夜のバイデン新大統領の就任で、何よりもまず「ホッとした」というのが実感だった。

 彼は就任演説で、「国の深刻な分断を打破すると同時に、国際社会へ復帰する」という意味の話をした。どちらも喫緊の課題で、元を正せば全てあの「子供老人」の後始末である。オバマ元大統領が初就任した時も、彼はその前のブッシュ政権の時に起きたリーマン・ショックの後始末にきりきり舞いさせられた。民主党がパーフェクトな党だなどと寝言を言うつもりはないが、どうもこの党は、共和党大統領のしでかした数々の事に対する「後始末」から政権をスタートさせる機会が多いような気がする(もっともそれは、共和党支持者だって同じ事を言うはずで、トランプ前大統領はオバマケアの後始末をしたのだと言うのだろうが)。

 史上最高齢で就任したバイデン新大統領の年齢を不安視する声もあるが、初の女性かつ人種の多様性の象徴の如きハリス新副大統領に期待をかける声もまた大きい。

 この二人が、新型ウイルスはもとより、複雑かつ巨大な数多くの問題に、国の内外を問わずどう対処していくのか、これからじっくり見守りたいと思っている。

 

 政治音痴な同居女子が就任式を見ながらしきりに色々な質問をしてきて、私がそれに答えながらの時間が過ぎた。

 そして最後に彼女は言った。

「やっぱ、ピーチってかわいいわ」

 あれには笑ってしまったが、庶民とは、私も含めそんなものである。

 だがいずれにせよ、きのうの夜更けに、アメリカの新たな夜明けがやってきた。未来は全く混沌としているが、それでもその「夜明け」は来たのだ。

 それもまた、感慨深い。

 

 次の4年、世界はどうなっていくのか。

 

 ピーチを眺めながら、見守りたいと思っている。